副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

副検事試験の勉強の進め方(コメントへの回答)

1 副検事試験を終えた方から、コメントに質問をいただきました。

  試験を終えて、今後の勉強方法に悩んでおられるようです。

  副検事に任官された先輩等の意見を聞き、過去問等をやり込む勉強をしてきており、「昨年までは、割と基本的で、書きやすい問題が続いていた」のに、令和6年度の問題は、「見たことがない不意打ち的な問題に、全く歯が立たなかった」のだそうです。

  出題傾向や難易度がガラッと変わってしまったようで、過去問等中心の勉強で良いのか、迷われているのでしょう。

  なお、令和6年度の副検事試験論文問題、コメント欄にて絶賛募集中です。科目別でも大歓迎です。来たものから公開したいのですが、未だに一つも来ていません。まあ、読み込んだりなんだり、手間がかかりますからね、、、。

2 まず、出題傾向について話しましょう。といっても、まだ令和6年度の問題を見てはいないので、一般論ですが。

  コメント主の方が「割と基本的で書きやすい問題」と言われているのは、おそらく「使う知識がよく知られているもので、問題が何を聞いているかも比較的分かりやすい」問題のことだろうと思います(以下「基本問題」と言います。)。こういう問題は、過去問等をやり込むことで、どんどん書けるようになっていきます。ただ、このテの問題は、受験者がみんなそれなりにできるので、差がつきづらい、という面があります。

  一方、コメント主の方が「見たことがない不意打ち的問題」と言われているのは、「問題が何を聞いているのか分かりづらく、問題点を抽出できない」「しかも抽出した問題点が、考えたこともないような問題で、どういう結論にするべきかも、その理由付けも、イチから考えないといけない」問題のことだろうと思います(以下「応用問題」と言います。)。このテの問題は、できる人とできない人の差がはっきりつきます。旧の司法試験なんかは、ほぼ全てが応用問題でした。当然、難しいです。なお、旧の司法試験を前提に、法律家の試験について書いた過去記事を貼っておきます。

 

fukukenjihouritukouza.hatenablog.com

  令和6年度の副検事試験は、この応用問題に寄せた出題が重なったのでしょうか。確かに令和5年度以前は、(特に憲法民法は)基本問題に近い出題が多かったように思います。たまたま令和6年度だけが応用問題が重なったのか、それとも、今後もこの傾向が続くのか、については、来年度以降の様子を見ないと確かなことは言えません。ただ、色んな事情を考え合わせると、今の時点で当局が副検事試験のハードルを上げるような事情は、そんなにないんじゃないかな、と思われます。なので、少なくとも「副検事試験が難化したから、諦めようかな」などと考える必要はないと思います。

3 それでは、勉強方法について考えましょう。すでにお話ししたように、基本問題については、過去問等を中心にした勉強を、これまでと同じように続けるのが良いと思います。何より、「基本的」な訳ですから、これができないと応用問題なんて手も足も出ません。また、副検事試験では、判例等を地道に勉強しておかないと全く書けないような「超基本問題」みたいなものも出ています。その点でも、過去問等を勉強の中心に置くのは正しいと思います。

  その上で、応用問題に対応するための勉強をどうするか、です。応用問題に必要な能力は「考えたこともない問題について法律的な問題点を考えて抽出する能力」「抽出した問題点について、妥当な結論とその理由を法律的に考える能力」でしょう。これを鍛えるのに最も良いのは「考えたこともない問題をたくさん解く」ことです。ただ、ここで大きな問題は、「考えたこともない問題」がなかなか手に入らない、ということです。旧の司法試験の問題は「考えたこともない問題」の宝庫なのですが、副検事試験の勉強の題材としては、ちょっとオーバースペックなところがあります(今の司法試験予備試験の問題も似ているかもしれません。)。なので、手を出すとしても、「試しにちょこっとだけ」にしておいた方がいいと思います。なお、旧の司法試験論文過去問を使った勉強の仕方についての過去記事を貼っておきます。

 

fukukenjihouritukouza.hatenablog.com

 

  じゃあ、応用問題どうするんだ、となりますね。次善の策として、副検事試験の過去問を「知らない問題として」解いてみる、ということになりますかね。知識として知っている問題でも、その知識がなかったとして、自分の頭の中身だけでどこまで議論を組み立てて論じられるかを考えてみる、ということです。当然、知識を駆使した答案に比べて、書けることは少ないし、内容も乏しいし、出来は悪いでしょう。ただ、本当に知らない問題が出た時に書けるのは、せいぜいその程度です。そして、「初めて考えた問題だけど、書ける」という状態が、実は「本当に法律の力がある」ということなのです。私が副検事試験の答案構成をする時に「知らない問題のように解く」と言っているのは、そういう意味です。

  ただ、繰り返していいますが、副検事試験では、極めて高いレベルの法律的な力は求められていないはずです。なので、この応用問題向けの勉強は、そういう問題が出た時に最低限対応ができるよう「お守り」としてやっておけば十分と思います。それを超えて「どんな応用問題が出ても大丈夫」を目指すなら、いっそ司法試験を受けた方が良さそうです。

4 さっきも触れましたが、当局は伸びしろの大きい優秀な人材を副検事として欲しがっている訳ですから。今ここで副検事試験のハードルを思いっきり上げるようなことはしないと思いますよ。

5 なお、コメント主からは「間違ったことを書いてしまったけど、減点対象でしょうか?」というコメントもありました。これも気になりますよね。本当に明確な間違いなら、減点されることもあるかもしれません。ただ、採点する側としても、微妙な論述について、「これは減点すべき絶対的間違いだ」と言い切るのは、案外難しいものです。読み方によっては、「絶対的間違いではないようにも読める」ことが結構あるからです。なので、「点数はもらえないけど、減点まではいかない」ことも案外多いように思っています。まあ、書いちゃったんだから、しょうがないでしょう!