副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

憲法その12(令和6年参考答案)

0 お気づきの方もいたかもしれませんが。

  実は、令和6年の答案構成については、研修誌の「設問の題意及び答案の傾向等」に関する記事を書いていませんでした。

  まあ、最も大きな理由は、自分が(諸般の事情により)「気が乗らなかった」というだけなのですが。

  ただ、思うところもありまして。

  私のスタンスとして、「一切勉強をせず、法律的思考だけで答案構成をしてみる」というやり方で来ました。しかし、副検事試験をこの何年か見てきた体感として、この試験は、「法的思考力云々も若干問われるけれども、地道に勉強をして、一定の範囲の知識を頭に入れ、理解して使いこなせるか、が最も点数に直結しそうな試験だ。」と思うに至りました。要するに、私のような「勉強しないでどこまで行けるかやってみよー。」みたいなのは、そもそもお呼びではないのです。多分。

  なので、今後は、私のノー勉いい加減な答案構成よりは、ちゃんと研修誌の設問の題意等を踏まえて、参考答案みたいなものを書いた方が、役に立つのではないか、と思うのです。一応、1時間で書き切れるものを想定しようとは思っています。

  では、いってみましょう。

 

1 憲法31条は、法律の定める手続によらなければ、何人も生命、自由を奪われたり、刑罰を課せられないことを定めている。これは、文言上は、刑事裁判手続、刑罰の執行手続等が法律により定められていることを要求している。それでは、憲法は、手続のみならず、実体法、つまり刑罰法規自体をも法律で定めることを求めているのだろうか。また、実体法や手続法について、法律でさえ定められれば、どのような内容であっても、いかに不当と思われるような内容出会っても、憲法はこれを許容するのであろうか。条文の文言上は、手続の法定のみを求めているように読めることから問題となる。

  まず、実体法についてであるが、憲法31条は、刑事手続のみならず、刑事実体法についても、法律によって定められることを求めていると解される。それは、憲法31条が、そもそも国家の刑罰権の恣意的な行使を抑制するための条文であり、単なる手続の法定のみでなく、実体法の法定まで含むと解釈しないと、その趣旨が没却されてしまうからである。また、憲法39条は、刑罰法規の遡及的適用を制限している。これは、刑事実体法が法定されるべきことを前提とした規定と解することができる。

  次に、刑事手続法や刑事実体法について、単に法定されるのみならず、内容の適正まで憲法31条によって求められているかについて論じる。この点は、当然、内容の適正まで憲法31条は求めているものと解される。そうでなければ、不当な内容の刑罰法規を定めることによって、国家が刑罰権を恣意的に濫用することを可能としてしまうからである。憲法の人権保障の機能を維持するという観点からも、刑事手続法や刑事実体法の内容の適正は不可欠である。

2 問2では、Aの刑事裁判において、Bの所有物が没収されようとしている。この場合、第三者Bに告知・聴聞の機会を与えないことで、憲法上いかなる問題が生じるか。没収という刑事手続自体は法定されていることから、法定された刑事手続の内容が適正か否か、が問題となる。没収は物の所有権を国家に帰属させる刑罰である。その効果は、第三者Bの所有物に対する所有権という財産権を強制的に奪うものである。そこで、告知・聴聞の機会をBに与えないままその所有物を没収することが、憲法29条で保障されたBの財産権を侵害し、ひいては、内容不適正な刑罰法規として憲法31条に反し、違憲ではないかが問題となる。

  確かに憲法29条は1項で財産権を保障しているが、同条2項において、財産権の内容が公共の福祉との整合性を当然に求められるものであるとも定めている。その意味で、財産権は公共の福祉(憲法13条等)による一定の制約を当然に受けるもので、絶対不可侵の権利ではない。また、経済的自由については、経済に関する様々な事情を考慮した上でその制約等がなされることから、その適否は司法権によるよりも、より専門性の高い知見を利用しうる立場にある立法機関において判断がなされるのが合理的である。また、仮に立法機関の判断が誤っていたとしても、経済的損失の事後的な回復も容易である。従って、経済的自由の意見審査においては、表現の自由等事後的回復の困難な精神的自由に比して、より緩やかな基準により判断されるべきと考える(二重の基準)。具体的には、経済的自由の意見審査においては、その目的、手段に合理性が認められれば、合憲と判断されるべきと考える。

  問2では、Aの刑事裁判において、Bの所有物に没収判決がなされようとしている。例えば、Bの所有物である違法薬物をAが預かり所持していた場合を考えると、Bの所有物を没収する必要性は極めて高いことが明らかである。その意味で、第三者Bの所有物をAの裁判で没収することの目的には、合理性が認められる場合がある。しかし、あらゆるものについて、Bの主張を一切聞かずに没収可能とすることが許されるとも思われない。また、第三者Bが判明している場合には、裁判所において第三者Bに告知・聴聞の機会を与えることは比較的容易である。第三者Bの所在、連絡先が不明の場合には、公告等の手段により告知・聴聞を申し出る機会を容易に与えられる。従って、緩やかな基準で判断したとしても、第三者Bに告知・聴聞の機会を与えないまま、Aの刑事裁判でBの所有物を没収することは、その手続に合理性がなく、憲法29条、憲法31条に反し違憲であると考える。一方、第三者Bに告知・聴聞の機会が与えられている場合には、合憲であると考える。

 

3 以上、1、2項が、研修誌の設問の題意等を踏まえた、1つの参考答案です.1時間で書き切るには、ちょっと長いかもしれません。ただ、問題提起の部分は、これでもか、というくらいに詳しく書いています。このくらいでいいんです。元々、憲法31条の問題の所在なんて、「それは単に手続だけじゃなくて、実体法や内容も適正じゃないと意味ないよね。」で済む話を、わざわざ出題してきているわけですから。こういう当たり前のことを聞いてくる問題については、馬鹿馬鹿しいくらい噛み砕いた問題提起をしないと、そもそも論述の土俵に乗せづらいのです。

  また、今回は、chat GTPさんにも活躍してもらいました。当たり前すぎて、どうやって論証したらいいんだろう?みたいな問題って、特に憲法では出てきます。そういう時の強い味方がAIです。おかげで、憲法39条を引っ張ってくることができました。もちろん、AIが作る論証をそのまま使えるわけではありません。ただ、自分で論証を考える手掛かりとしては、十分役に立つレベルと思います。

  ちなみに研修誌では、憲法に関する記載は少なかったです。特に「設問の題意等」は4行で、久しぶりの人身の自由であること、第三者所有物没収の手続は検察実務に馴染みあるものであること、に触れているだけでした。「答案の傾向等」では、設問1について、「適正手続」「罪刑法定主義」のキーワードのどちらかに触れた答案は多かったが、条文から直接導かれる「刑事手続法定主義」を端的に指摘した上で、「手続の内容の適正」「実体法の法定」「法定された実体法の内容の適正」と論じることができた受験生は、比較的少なかったそうです。設問2については、設問1のどのカテゴリーの問題なのか、指摘してほしかったようです。手続の内容の適正ですね。得点の高い答案は、没収が刑罰であって、憲法31条の対象であること、設問1との関係で、手続の内容の適正の問題であることを示しながら、憲法31条、憲法29条1項について論じられたものだそうです。逆に、得点が高くなかった答案は、設問1で、憲法31条の問題点の指摘が不十分(いきなり「31条は手続のみならず内容の適正まで求めている」と結論に飛びつく等)なもの、憲法31条関係の論証が曖昧なもの、設問2で憲法31条と行政手続の関係を延々論じたもの、憲法35条(押収)に引っ張られたもの、などがあったそうです。