副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

検察事務官の一斉考試と司法試験の択一試験

1 2023年5月号の研修誌に、全国一斉考試の特集が掲載されています。

  他省庁の方のために簡単に説明すると、検察事務官は、一定の年次になるまでは、毎年1回、2月頃に実施される「全国一斉考試」というテストを受験しなければなりません。科目は「憲法検察庁法」「民法」「刑法」「刑訴法」「検察事務」の5科目で、各25問100点満点、合計500点満点、回答方式はマルバツです。

2 平均点が400点弱、最高点496点、最低点204点だそうです。適当につけても半分正解とすると、全体の60%を実力で正解し、40%を適当にマルバツをつけて半分正解すると平均点くらいになりますね。まあ、最低点の方は、運が悪くて正答率が50%よりも大分低くなってしまったようです。

  最高点の方は、125問中、1問だけ間違えてしまった、ということですね。すごいことです。

  480点以上で上位30人(2424人中)となり、法務総合研修所長表彰の受賞対象だそうです。ここに届かなくても、各高検単位で検事長表彰の受賞対象となります。

  研修誌には上位得点者による感想文も7名分掲載されています。皆さんそれぞれ工夫して、よく勉強されています。研修教材や過去問が定番のようですが、それ以外に大学時代のノートや、行政書士宅建等資格試験のYouTube動画(改正された民法についてだそうです)、司法試験の短答式(いわゆる択一試験)過去問も利用されている方がおられました。また、入庁3年目で所長表彰を受けた方もおられるようです。みなさん、かなりの熱量で一斉考試に望んでいることがうかがえました。

3 司法試験の択一の話が出てきたところで、「そういえば、司法試験は択一があるのに、副検事試験には択一試験がなくて、いきなり論文試験だな。」ということが頭に浮かびました。ちなみに司法試験の択一試験は、マルバツだけでなく、選択肢が5個とかそれ以上の問題も出ているようです。余談ですが、今でこそ司法試験の択一試験は問題が試験後に公開されていますが、大昔は問題が公開されていませんでした。そこで、司法試験予備校では、択一試験の過去問を手に入れるために、「問題を暗記してくるアルバイト」を雇い、択一試験を受験させて問題を暗記させて過去問を把握していたようです。とはいえ、60問もあるので、かなり大変だったろうと思います。なお、こうして手に入れた過去問は、解説を付けて司法試験予備校が売っていました。国家試験って著作権ないんでしょうね。

4 話を戻しますが、副検事試験の場合、検察事務官に限ってですが、一斉考試が択一試験の代わりを務めているのかな、と感じました。副検事試験を突破する任官者は、経歴として、一斉考試で検事長表彰以上の受賞歴がある方が多いようです。別に受賞歴は、副検事試験を受験する条件ではないものの、事実上の尺度として機能しているのではないかと。一斉考試で一定の受賞歴があることが、一定の法律的素養があることの保証になっているようなイメージです。

5 そうすると、他省庁の副検事志望者も、一斉考試の過去問を解くことで、自分の法律的素養がどの辺まで成長しているかについて、確認できるのではないか?などとも思いました。もちろん、「検察事務」の科目は、証拠品事務とか検察庁内部の事務手続きに関する科目なので、これを解くのは難しいと思います。ただ、他の科目は副検事試験の受験科目な訳ですから、自分の力量を簡易に測定する尺度に使えるのではないかと思ったわけです。インターネットで「検察事務官 一斉考試 過去問」と検索してみると、やはりおられるんですね。一斉考試の過去問を解説付きで掲載されている方が。

  もちろん、副検事試験の論述問題は、知識だけではなく、法的思考能力も問われます。一斉考試のような、主に知識を問う問題だけでは、その人の法的能力全般の評価は困難です。ただ、「検察事務官は、こういうのを勉強して、みんなある程度できるようになってるのだな。」という目安にはなるかな、と思ったものです。