副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

特任検事について

0 御礼

  たまにコメントをいただきます。ブログを始めて感じたことは、「読み手の反応がなかなか分からない」ということです。そんな中、好意的なコメントをいただくと、励みになります。ありがとうございます。なお、コメントについては、基本的に公開はせず、お答えは記事の中でしようと思っています。

  また、「こんなテーマの記事が読みたい」みたいなコメントも参考になります。自分では当たり前になっていることって、なかなか記事にしようと思いきれないもので。では本文にいきましょう。

 

1 研修誌の22年10月号には、特任検事試験の問題も載っていました。今回は、特任検事について、ちょっと雑談してみます。

2 特任検事試験は、副検事に任官して3年を経過すると受験資格が得られると聞いています。それ以外の受験資格があるのか、私は知りません。今は、試験科目は「憲法民法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法」のようです。1科目2問で2時間のようです。問題を見ても、かなり手強そうです。民法、商法、民事訴訟法もあるんですね。試しに解いてみよう、という気持ちが全く湧いてきません。ちゃんと勉強しないと無理そうです。あと、これらの他に、「検察」みたいな、白表紙記録(試験用の模擬記録)を使った起案(起訴状と処分決裁資料のようなものを書く)の試験もあるようです。司法修習所の卒業試験も似たような試験があり、こちらは1科目1問の試験時間が10時から17時、昼休み込みで7時間でした。特任検事試験も似たような形なのでしょうか?

3 特任検事は、任官した時点で、「司法修習を経た検事の10年目相当」と見られます。検察事務官から副検事、特任検事になると、最短で36〜37歳ですから、年齢的にもあまり差がないです。ただ、特任検事試験は、かなり難しいです。レベル感的には、「旧の司法試験と同じ」と思っています。そして、旧の司法試験がなくなった今では、「おそらく日本で最も難しい試験」だと私は密かに思っています。特任検事試験は、裁判所書記官出身の方が強いイメージです。元々裁判所書記官の方は、司法試験を目指していた、という方が一定数います。また、刑事だけでなく民事も仕事で使いますし。

4 特任検事は、今は全国で20人くらいでしょうか。ただでさえ難しい上に、仕事をしながら勉強ですから、よほどモチベーションと能力が高くないと、そもそも受験するに至りませんよね。

  特任検事の待遇については、時代と共に移り変わってきました。

  昭和から平成にかけての頃は、モノの本を読んだりすると「矯正(刑務所等)出身の東京地検特捜部副部長」とかおられたようです。司法修習を経ていようが、特任だろうが、検事としてあまり区別がなかったようです。ただ、それでも特任検事が検事正になるのはレアだったようで、伊藤栄検事総長の時に、お一人特任検事が検事正になったのが最初と聞いています。伊藤栄樹さんとしては、これに続いて特任検事の検事正が当たり前になってほしいとお考えだったようです。ただ、その思いとは逆に、その後は長い間特任検事の検事正は出ませんでした。

  その後、むしろ特任検事は出世しづらい状況が続いていたようです。実力、人格とも優れた方が、ようやく部制庁の交通部長になれるくらいで、交通部以外の決裁官(副部長以上)になる方は、ほぼいませんでした。東京地検の副部長ポストは、司法修習を経た検事にとっても、是非なりたいポストであって、特任検事が東京の交通部副部長になったりすると、昔は「特任がポストを取るな」という声もあった、という話を、実際に特任検事から聞いたことがありました。

  また、特任検事は、昔は、退職しても弁護士にはなれませんでした。なので、おいそれと退職するわけにもいきません。ただ、この点は、今から20年くらい前でしょうか、法改正があって、特任検事を5年勤めれば、退職後に短期間の研修を受けることで弁護士資格を得られるようになりました。この制度ができた途端に、特任検事が何人も一斉に退職して弁護士になってしまったのを見て、ちょっとビックリしたのを覚えています。今思えば、決裁官等になる道が細く、「弁護士になって一国一城の主になる方がいい。」と考えた方が多かったのでしょう。

5 ここ10年くらいは、特任検事の待遇も改善されました。能力的な条件が合えば、中規模地検の次席検事、交通部に限らず部制庁の副部長、部長、次席検事、地方の中小地検の検事正をされる方が多く出るようになりました。ただ、これらのポストは、司法修習を経た検事であっても、力量不足ではなれません。なので、あとは本人の力量次第でしょう。力量さえあれば、検察事務官から検事正になれるわけです。実際にそういう方がおられるわけです。実力さえあれば活躍の場が広がります。特任検事の待遇改善は、すごく健全なことだなと思います。