副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

司法書士法4条2号

0 新年明けましておめでとうございます。今年も2週に1回更新のゆったりしたペースでやっていきたいと思います。

1 たまたま見かけた法律がちょっと気になったので、取り上げてみました。

  司法書士法です。

  司法書士というのは、主に不動産等の登記手続を代理人として取り扱う士業です。マンションとかを売ったり買ったりするときにお世話になることがありますね。大金が動く取引についての履行に関する手続ですから、「間違っちゃった」では済まされません。専門的な知識や経験が必要な業務と思います。また、司法書士は、一定の民事裁判について、代理人の業務を行うことができます。元々は、弁護士でなければできない業務だったのですが、擦ったもんだの末に司法書士にも一部について民事裁判の代理人となることが認められたという記憶です。弁護士会は、こういう職務侵食に対して極めて厳しい姿勢であるのが一般的です。まあ、仕事を一部取られてしまうので、そりゃそうだ、という感じです。司法書士の団体もあるのでしょうが、よく弁護士会の壁を打ち破ったものです。

2 司法書士試験は難関試験として有名で、合格率は約4%(実受験者ベースでも約5%)くらいのようです。やはり司法書士試験の予備校に通ったりして合格を勝ち取るようです。司法書士を目指して勉強していた知り合いを見渡しても、実際に合格に至ったのは一部に止まります。かなりの難関試験と思います。

3 そんな司法書士ですが、なんと司法書士法4条2号に、検察事務官から司法書士になるための規定が設けられているのです。条件は「10年以上の職務従事」及び「業務遂行に必要な能力を有すると法務大臣から認められること」。他に裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官も同じ取り扱いをされています。

  このうち、法務事務官は、要するに法務局の職員を念頭に置いているのでしょう。申請のあった登記手続を取り扱うのが仕事ですから、10年も職務従事していれば、確かに司法書士の業務を遂行する能力は身につきそうです。

  一方、検察事務官は、、、、登記に関する業務を取り扱うことは、ほぼなさそうです。この制度を使って司法書士になった検察事務官っているのでしょうか?検察事務官だけ10年やってても、法務大臣から「司法書士OK!」と言ってもらうのは、かなり難しいように思います。

  どうして検察事務官がここ(4条2号)に入っているのでしょう?裁判所書記官は、まあ分からなくもないんですよね。和解調書の作成とか、色んな法律的業務を取り扱う関係で、多分司法書士法以外の法律でも、転身が認められていそうに思います。方や検察事務官が転身が認められている法律は、副検事を除くと私は司法書士法が初めてでした。

  念のため、税理士法を覗いてみましたが、税理士法検察事務官裁判所書記官も転身は認められていませんでした。

  もし、検察事務官を10年やったら司法書士になれる、となったら、検察事務官大人気になるでしょうね。でも、みんな10年経って辞めちゃったら、若手検察事務官しかいなくなっちゃって、検察庁は大変そうです。そんな話を聞いたことはないので、検察事務官から司法書士になるのは、ものすごくハードルが高いのでしょう。多分。

  ふと思ったのですが、法務局から人事交流で検察庁に来る人のために、検察事務官でいる間も職務従事期間になるようにこの規定に検察事務官を入れた可能性もあるかもしれません。

  検察事務官のどなたかが「司法書士になりたい!」と手を挙げたら、何かが変わるかもしれません。くれぐれも、「このブログを見て知った」とか言わないでください。

4 ついでに、税理士試験について少し。副検事試験とは試験つながりということで。

  税理士試験は、ちょっと特殊な制度になっていて、「1回合格点を取った科目は、以後免除になる」という建て付けになっています。つまり、全科目をいっぺんに合格する必要がないんです。極端な話、1年ごとに1科目ずつだけ集中的に勉強して、一つずつ合格していけば、全部揃うと税理士試験合格となるのです。ラジオ体操のスタンプのような感じでしょうか(違うか?)。

  しかも、修士(大学院卒)の資格があると、その専門分野に関する科目が免除(合格扱い)になるという制度もあります。修士は2年ですから、期間的にはそこまで大きな負担ではありません。まあ、修士論文は通らないといけませんが。

  朧げな記憶ですが、30年くらい前までは、2、3の専門分野の修士資格を得ることで、税理士試験合格に必要な科目全部の免除が得られたはずです。つまり、一切試験に合格しないで、税理士の資格が得られたのです。ただ、それはあまりにダメだろう、ということで、制度が変わったような記憶があります。しかし、今でも修士資格の科目免除の制度自体は残っているようです。

  私は、学生の頃に周りに税理士を目指していた知り合いもいたので、こういう話は自然と耳に入ってきていましたが、周りにそういう人がいないと、入ってこないものでしょうか。転身のタネは、実は色々あるかもしれません。