副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

副検事試験の口述試験等

1 今年、副検事試験の論文試験を突破した方から、検事長面接と、その後に実施される口述試験についての情報をいただきましたので、ご披露させていただきます。

2 論文試験を合格すると、次の試験は口述試験なのですが、その前に「検事長面接」というのがあるそうです。そういうのがある、ということは聞いていたのですが、口述試験の後だと思い込んでいたので、口述試験の前であることは、私自身、今回初めて知りました。

  ちなみに検事長というのは、全国8高検の長官と、次長検事(最高検のナンバー2)の9人を指して言います。検察庁法を勉強した方は、名前は知っていると思いますが、他官庁の方だとどんな立場の人か、イマイチピンとこないと思います。そこで、まず検事長とはどんな存在か、ということを簡単にお話ししましょう。

  分かりやすいのは、俸給がどのレベルに設定されているか、ですね。検事長は、大体ですが、政務官副大臣の間くらいの位置付けになります。東京の検事長だけ、ちょっと俸給が高いのですが。ちなみに、検事総長は大臣と同じ位置付けです。まあ、結構えらい感じだ、というのは伝わるでしょうか。

  なお、検事長になる人と言うのは、検事のうち、①法務省で行政関係をバリバリ頑張って偉くなった人、②特捜部などで捜査をバリバリ頑張って偉くなった人、③ ①と②を両方バリバリ頑張って偉くなったスーパーマン、がなることが多いようです。まあ、普通の検事は、およそ「検事長になりたい」とかは考えませんし、それなりに偉くなった人の中で「検事長になりたい!」と強く思っている(ことが言動から容易に透けて見える)検事でも、なれない人も結構いるとか。

  ちなみに、検事長は「認証官」と言って、辞令は天皇陛下からいただきます。辞令のいただき方にもお作法があるみたいで、「自宅で20回くらい練習した」と言ってた人もいました。

3 こんな感じの人が検事長です。そう聞くと、「検事長面接」の心理的ハードルが上がってしまうかもしれません。ただ、さすがに検事長になるくらいですから、ほとんどの人は、人柄的にも元々穏やか、又は検事長になってから穏やかになられるようです。安心してください。

4 それでは「検事長面接」についてです。知ったような口をききますが、情報提供をいただいた伝聞の話ですので、決して私が自分で体験したものではありません。

  面接官は、検事長以外にも複数人おられたそうです。陪席が誰だかは想像するしかありませんが、高検次席検事、事務局長、総務課長あたりでしょうか。

  質問事項は、志望動機、長所短所、検察庁に入ったら何をしたいか、被疑者や被害者とどのように接していくのか、などだそうです。やはり、人物評価や、検察官としての資質を確認することに主眼がありそうです。

5 そして、本番の口述試験です。やり方は、長文問題を15分間検討し、30分で口述の試験です。具体的には、検察庁の大部屋に集められ、前方の「ロケット台」に座らされたものが、30分毎に長文問題を検討する部屋に入れられ、検討をさせられます。この「ロケット台」という表現を聞いた時に、自分の口述試験を思い出しました。当時の司法試験は、1日1科目で連日全科目が終わるまで口述が続いていました。その時も、次に応試するものが「発射台」と呼ばれる椅子に座らされ、順番が来るとエレベーターに乗せられて発射されていました。係の人が本当に「発射台」と呼んでいたのです。多分、法務省の面接試験は全部似たようなものなのでしょう。

  30分間の口述試験は、試験官2人に応試者1名とのこと。民法無権代理と相続」、刑法を絡め「二重譲渡における民法上と刑法上の違い」、刑訴・憲法「黙秘権」「刑訴法322条1項」「財産権と第三者所有物没収事件判決」、検察庁法「検察官同一体の原則」「独任制官庁」と幅広く聞かれたそうです。つっかえると丁寧な誘導があり、泥舟はなかったよう思う、とのことでした。答えに詰まった時に唯一副査が口を開いたそうで、応試された方は「副査に突っ込まれると減点要素では?」と感じられたそうです。私のイメージ(根拠はない)ですが、主査が実務家、副査が学者で、基本的に実務家が口述試験を進めるが、気が向くと学者が口を挟む、とか、そんなことではないかと思っています。

  また、試験後は、水(大人用)や麦茶(大人用)をしこたま飲み、大きな解放感があったそうです。やはり水も麦茶も大人用に限りますね。

6 口述試験は、基本的な知識の確認と、口頭によるアウトプット能力を問うほか、「二重譲渡における民法上と刑法上の違い」のように、その場で考える力を問う面もあるようです。とはいえ、別に学者が後継者を選ぶ試験とは違うので、格好つけようとせず、地に足をつけて、自分に分かることを根っこからきちんと説明できれば、大丈夫でしょう。

7 この記事は、論文試験で残念だった方には、少し厳しい話題とは思います。ただ、本当に副検事試験に合格するなら、必ず通る道です。そして、先人がせっかく提供してくださった情報です。もう一度、副検事試験を目指すのであれば、そろそろ気持ちの整理をして、「来年こそは自分も!」とハートに点火する頃と思います。

  また、情報を提供してくださった方には、この場を借りて厚く感謝申し上げます。ありがとうございます。