副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

副検事として事件に向き合うマインド

1 まあ、副検事に限らず、検事も検取事務官も一緒なのですが。

  刑事事件というのは、一般社会の中でいうと、かなり大きなトラブルですね。「警察沙汰」という言葉があるように、刑事事件なんて、そんなものに普通は巻き込まれたくない。そんなことに常日頃から業務として首を突っ込むわけですから、検察官とはなんとも因果な職業です。とはいえ、選んでやるんですから、腹を括るしかありません。

2 まあ、大きなトラブルですから、被疑者は全力で何とか逃げ切ろうとするものです。ある時は物理的に警察官を振り切ろうとし、ある時は何とか弁解を重ねて検察官に不起訴にしてもらおうとします(本当に悪いことをしている人の場合ですよ。)。

  一方、被害者がいる犯罪なら、被害者も基本的に怒っています。「絶対許さない!」まあ、普通そうですよね。

  こんな中で、副検事をはじめ、検察官は捜査を遂げて刑事処分を決めなければなりません。まあ、普通は起訴か不起訴しかないんですが。

3 ここで良くないのが、「できるだけ穏便に済ませよう」というマインドです。被害者があまり怒ってないなら、不起訴の方向に、とか。起訴するにしても、被疑者がなるべく争わないように、とか。

  人間ですから、なるべく穏便に済ませたい気持ちが出てくるのは仕方がありません。ただ、残念ながら、検察官は、「トラブってからが仕事」という因果な職業ですから。穏便に済むはずがありません。そんな時に「穏便に済ませよう」としても、無駄ですし、それは大抵の場合、「大間違い」です。

4 やはりここで大事なのは、トラブルに突っ込んでいくマインドですね。まずは「実際何が起きたんだ?」という部分を解明すること。それが、被疑者、被害者のどちらに有利だろうが不利だろうが、関係ありません。実際に起きたことが分からないと、事実認定ができません。そんな状態では、刑事処分を決めることも困難です。

  そして、事実認定ができたら、法的な検討です。被疑者に何らかの刑事責任が問えるか、という検討です。この時の考え方は、「被疑者に対して、最も厳しく刑事責任を問える法律構成は何か」という考え方でOKです。別に、何でもかんでも重く処罰しようとしているわけではありません。重いものを検討して、起訴が困難なら、次に重いものを検討していくのです。こうして、被疑者の負うべき刑事責任の程度を見極めてくのです。

  要約すると「全容解明」と「被疑者の刑事責任の限界の見極め」ということになるでしょうか。

5 ただ、これが「穏便」マインドでいると、どうしても落とし所を探るような捜査や法律の検討になりかねないのです。最初から小さくまとめようとすると、全容解明は難しいですし、適正な刑事責任を問うのも難しいです。「ギリギリまでまとめに入らない」のが、結構大事なことだと思っています。まあ、そうは言っても満期は来るので、どこかでまとめに入らないといけないのですが。あくまで「そういうマインドでいよう」ということです。