副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

答案は判例の立場で書くべきか?

1 コメントにて質問をいただきました。要約すると

「① 実務家試験である副検事試験では、刑法、刑訴、憲法判例に従った論証をすべきか。その際、『判例同旨』と記載すべきか。② 市販テキストにある『判例を批判して自説を主張』という論証に乗ってしまって良いのか。③ どの立場であれ、反対説の批判は必要か。④ 二次試験前にある検事長面接とはどのようなものか。」

 ということと理解しました。あってると良いのですが。

2 ①と②は、質問された方は、おそらく一つの質問と意識されていると思いますが、答える都合上、2つに分けて整理しました。

  まず①についてです。副検事試験は、確かに実務家試験ですが、あくまで法律的素養を確認するための試験です。ですから、「判例じゃないから減点」ということは、基本的にないはずです。ただ、出題がそもそも「判例を挙げて論ぜよ」みたいな形式の場合には、判例の指摘をしなければならないでしょう。①のような質問が出るのは、「実務に出ると判例が全て」ということをご存知だからと思われます。それはその通りです。なので、副検事試験のために絶対判例を勉強する必要はないと思いますが、実際に副検事に任官したら、刑法と刑訴法については、判例を知っておかないと仕事になりません。任官後のことまで考えると、刑法、刑訴法に関しては、副検事試験受験の時から判例の立場で勉強をしておいた方が、効率は良いかも知れません。ただ、私が受験生の頃は、時間がないのと、暗記が苦手だったため暗記物を極限まで削った結果、ほぼ判例を知らない状態で試験に臨んでいました。次に論証で「判例同旨」と指摘するか、ですが、これは想像ですが、「判例同旨」と書いたことで点数がものすごく跳ね上がる、ということはないんじゃないか、と思います。というのは、判例に沿った論証ができていれば、それ自体で十分評価されるからです。仮に「判例同旨」という記載に配点があったとしても、ごくわずかなものだろうと思います。それでも「判例同旨」の記載が有効な場面があるとすれば、「判例の立場であることは知っているが、その理由づけが上手く論証できなかったり、論証に自信がない場合」でしょうか。この場合は、「判例同旨」と指摘することで、理由づけの乏しさを少しフォローできるかも知れません。「判例だ!」と明示されると、採点者もあまり大きく減点しづらいのではないかと思う、というだけのことなんですが。ただ、判例ではなかったり、判例と若干異なる見解なのに「判例同旨」とやってしまうと、これは減点されても文句は言えません。なので、私は「判例同旨」は、判例を不勉強だったこともあり、ほとんど書いたことがありませんでした。

  なお、憲法は、特に人権に関して言えますが、判例の立場で勉強するのがあるべき姿だと思います。条文があまりに抽象的で、条文だけから法解釈をして理由づけるのが極めて困難で、判例に頼るのが最も楽だからです。

3 ②についてですが、市販のテキストの論証について、内容がちゃんと説得的なのであれば、別に乗ってしまって判例を批判しても、ちゃんと試験では評価してもらえると思います。判例の立場について、上手く理由づけを自分の言葉で説明できない時は、敢えて理由づけがしやすい立場を採用する、というのもありかな、と思います。

4 ③についてですが、論証の中で反対説の批判というのは、必須ではないと思います。反対説の批判というのは、理由づけの手段の一つと思います。法解釈の理由づけは、「必要性と許容性」が基本であり、「必要性」には保護すべき利益の内容や重要性の指摘が、「許容性」には、対立利益との利害調整などが含まれます。これらを一通り自分の言葉で論じ切るのが望ましいことです。ただ、反対説の批判というのは、その中でなんとなく必要性や許容性を論じているように見えるので、理由づけが上手く行かない時に、追加して反対説批判をしておくと、理由づけを少し補強してくれたりするのだと思います。もちろん、自説をしっかり理由づけした上で、反体説批判まで言及すれば、加点要素でしょうが、あとは試験中にそこまで書き切れるか、という時間との兼ね合いではないでしょうか。

5 最後に④です。これは、私も何のための存在なのか、確たる理由は知らず、想像するしかありません。ただ、副検事試験は採用試験ですから、全く人物評価をしないまま、法律的な素養だけで人の採用を決めることは、ないんだろうな、と思います。そういう意味で、この検事長面談が、人物を見る場なのではないかな、と想像しています。二次試験自体は、法律に関する面接ですから、検事長面接で人物を見るしかないのだろうと。別に普通の人物であることが伝われば、それで十分なのではないでしょうか。何も特別なことは求められていないと思います。

6 あまりまとまりがないのですが、以上です!