副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

憲法その8(令和5年答案構成)

1 今度は憲法いってみますか。憲法も毎度、「設問の題意等」から駆け離れたことを書いてしまうのですが。

問1 全て司法権を裁判所に帰属させる原則(憲法76条1項)について、司法権の意義を述べた上、同法の明文上の例外及びその規定の趣旨を述べなさい。

問2 次の各訴えが司法審査の対象となるか、論じなさい。

⑴甲が、「現在国会で審議中の法律案は、明らかに憲法に違反するので無効である。」旨を主張する訴え。

⑵某宗教団体に対し、本尊を安置するための本堂建立資金を寄付した同団体の元信者乙が、その本堂に安置された本尊は同団体の宗教教義に反する偽物であることが判明したので、本件寄附行為は錯誤に基づくもので無効であると主張し、寄附金の返還を求める訴え。

⑶某市議会の議員丙が、同議会による同人に対する出席停止(年4回開かれる定例会のうちの一つの会期全日程である23日間の議会への出席停止)の懲罰議決は無効であるとして、議員報酬のうち本件処分による減額分の支払を求める訴え。

  では、いつものように、「知らない問題を解く気持ちで」「問題の所在を手厚く」「麓から三合目まで登るイメージ」を心がけましょう。

2 まずは全体のイメージです。統治分野で、モロに三権分立を聞いてきています。「もしかして、副検事試験って三権分立を聞かないのかな」などと心配していましたが、安心しました。

  問1では三権分立の原則と例外について、問2の(1)と(3)は三権分立の当てはめっぽい問題です。問2(2)だけは、三権分立とは別の観点から、司法権の及ぶ範囲を問うているようです。問1は、これだけで答案1通書けそうですが、問2もあるので、できる限りコンパクトにまとめる必要がありそうです。

3 では問1から。

「1 問1について、憲法76条1項は、全て司法権を裁判所に帰属させる旨を定めている。これは、憲法が国家権力を立法権、行政権、司法権の三つに分割し、それぞれ国会、内閣、裁判所に帰属させる三権分立の制度を採用したことの現れである(憲法41条、65条、76条)。

  三権分立は、国家機関による権力濫用を抑止するための制度であり、国家権力を司法権等三つに分割し、それらを独立した別個の機関に帰属させた上で、機関相互が抑制し合う制度とすることで、権力濫用を抑止するものである。」

  うーん、問題提起を手厚く、とか言いながら、いきなり三権分立に入りましたね。まあ、憲法というのは、条文が少なくて、しかも曖昧な規定が多いので、解釈に頼る部分が多いんですね。三権分立についてすら明文の規定はなくて、「条文の規定振りによると三権分立の制度を採用していると解釈される。」ということですから。まあ、書ける分量も限られていますし、ここは割り切りましょう。

 「憲法は、司法権を裁判所に帰属させるとともに、76条2項において特別裁判所を禁じ、行政機関が最終的に司法権を行使することを禁じた上で、同条3項において、裁判官が憲法及び法律にのみ拘束され、それ以外の干渉を受けることなく独立して司法権を行使することを、明文をおいて定めている。これは、歴史上、裁判所が権力からの政治的な干渉を受けてきたことに鑑みて、特に司法権の独立を強調したものと解される。」

  司法権の独立に関しては、問題で正面からは聞かれていません。ただ、三権分立を実効化するための規定になります。まあ、どこまで書くかですが、三権分立だけだと記述内容が薄い感じがしたので、言及してみました。このくらいでどうでしょうか。あくまで条文ベースですし、難しいことは書いてないつもりです。

 「一方、憲法は64条において、国会に弾劾裁判所を設置する権限を付与している。これは、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するためのものである。これは、三権分立の制度や司法権の侵害を認めるようにも見えることから、問題となる。

  しかし、三権分立は、権力の分立とともに、相互抑制の機能も採用しており、国会が弾劾裁判所を設置できるのは、立法権司法権に対する抑制の一つであって、三権分立の趣旨に反するものではなく、むしろその趣旨に適うものである。また、弾劾裁判所は裁判官の罷免という、極めて限定的な場面においてのみ設置されるものであって、裁判所の司法権を大きく奪うものではない。また、反対に司法権違憲立法審査権(憲法81条)など、司法権を抑制する権限を付与されており、これらによって国家権力の相互抑制が図られている。

  また憲法55条には、国会の両議院が各々、その議員の資格に関する争訟を裁判する、と定めている。この規定は、国会議員の資格争訟に関しては、裁判所ではなく国会の両議院に裁判権を認めることで、国会の裁判所からの独立を保とうとしたものと解される。」

  明文の例外はこんなもんでしょうか。違憲立法審査権を持ち出したのは、「裁判所も国会に対する武器があるでしょ」という許容性的な意味合いと、「三権分立の問題と分かっていますよ」というアピールです。55条は、条文をながめていたら「裁判」の文字があったのでちょっと触れてみました。別にいらないかな、とも思ったのですが。

4 では、問2です。

「2 問2(1)について

   国会で審議中であり、立法前の法律案について、司法審査の対象となるか。法律案の審議は、立法の過程であって、まさに立法権の中核的要素と言える。このような段階で裁判所に違憲立法審査権の行使を認めると、裁判所による立法作用への関与を大きく認めることとなる。これは、三権分立の制度を採用した憲法の趣旨と合致しない。また、立法直後の法律について、具体的な争訟がないにも関わらず、抽象的に取り上げて裁判所が違憲立法審査権を行使することも、同様に実質的に法律の成否を認めるか否かを裁判所が決する権限を付与するに等しく、三権分立の趣旨に反する。従って、裁判所の違憲立法審査権の行使は、国会による立法がなされた法律について、具体的な争訟の中においてのみ、裁判所がその合憲性を判断することが許されると解される。」

  問題提起を敢えて飛ばしました。書こうとすると、その後の検討で同じことを重ねて書くことになりそうだったので。また、「具体的争訟云々」のところは、いらないかな、とも思ったのですが、最終的な「違憲立法審査権を行使できる場面の解釈」につながるところだったので、余事記載と言われない程度に触れてみました。

5 では次です。

「3 問2(2)について

   本問は、具体的な争訟であり、司法審査の対象となるようにも思われる。しかし、その争点は、本尊が宗教教義に反する偽物か否か、というものであり、これを司法審査するためには、裁判所が宗教協議を解釈し、本尊が本物か偽物かを判断して決しなければならない。これは、国家権力による宗教への極めて強度な干渉である。憲法20条は、何人に対しても信教の自由を保障しており、本問のような、宗教協議の解釈を伴うような争訟について司法審査の対象とすることは、信教の自由を害するものであって、認められないと解する。」

  ちゃんと勉強していれば、もう少し書くことがありそうな気もしますが、勉強なしだとこの辺りが限界です。多分、判例があるところなのだと思うのですが、出てきませんでした。

6 では最後に。

 「4 問2(3)について

    憲法は、国会議員については懲罰の権限を両議院に付与する旨明文を置いているが(憲法58条2項)、地方公共団体については、同様の明文規定は置いていない。では、地方議会が議員に下した懲罰議決の有効性を司法審査の対象とすることができるか。

    この点、確かに本問では議員報酬の減額分を争うという具体的争訟性が認められ、司法審査の対象とすることが可能なようにも思われる。

    しかし、地方議会は、条例制定権憲法94条において認められており、法律の範囲内において、国会類似の機能を有するものである。また、その構成員である議員についても、住民による選挙によって民主的に選出されるものである(憲法93条2項)。このような地方議会の国会類似の役割に照らせば、地方議会における議員の懲罰についても、国会に準じて司法審査の対象とはならないと解するのが相当である。このように解したとしても、地方議会の議員は次の選挙で住民の投票の対象となるのであり、懲罰を受けた側と懲罰をした側のいずれに非があるかは、住民の民意による審査を受けることから、問題はないと考える。」

  と、これでどうでしょう。(3)は、論点として知っている必要はなく、「その場で考えてね」という問題かな、と思いました。なので、結論はどちらでも良く、内容が論理的に検討されていればOKと思います。、、、、何て言ってたら、また判例があるところだったりして。よくあるパターンですね。

7 くれぐれも、憲法が不勉強で苦手な人間の書いたものですから。自分の答案が、私の書いたものと違っていても気にする必要はありませんし、似ていても安心してはいけません。じゃあ、なぜ記事にするのか?それは「こんなことを考えながら書いているんだ」という過程をお見せできれば、と思っているからです。目的が達成できているかはさておき。以上です!