副検事になるための法律講座

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令和5年副検事試験憲法、民法、刑法問題

 令和5年副検事試験の憲法民法、刑法の問題を提供いただきました。長い問題を頑張って入力して下さりました。受験でお疲れのところ、感謝です。

 

憲法

問1 全て司法権を裁判所に帰属させる原則(憲法76条1項)について、司法権の意義を述べた上、同法の明文上の例外及びその規定の趣旨を述べなさい。

問2 次の各訴えが司法審査の対象となるか、論じなさい。

⑴甲が、「現在国会で審議中の法律案は、明らかに憲法に違反するので無効である。」旨を主張する訴え。

⑵某宗教団体に対し、本尊を安置するための本堂建立資金を寄付した同団体の元信者乙が、その本堂に安置された本尊は同団体の宗教教義に反する偽物であることが判明したので、本件寄附行為は錯誤に基づくもので無効であると主張し、寄附金の返還を求める訴え。

⑶某市議会の議員丙が、同議会による同人に対する出席停止(年4回開かれる定例会のうちの一つの会期全日程である23日間の議会への出席停止)の懲罰議決は無効であるとして、議員報酬のうち本件処分による減額分の支払を求める訴え。

 

民法

 Bは、Aに対して売買代金債権(以下「本件債権」という。)を有していたが、資金繰りに窮したため、本件債権を、令和5年5月1日にCに、同月2日にDにそれぞれ譲渡し、Cに対する譲渡については同月1日付けの、Dに対する譲渡については同月2日付けのそれぞれ確定日付のある証書でAに通知した。

問1 Cに対する債権譲渡とDに対する債権譲渡について各確定日付のある通知が同時にAに到達した場合、CとDの優劣関係について論ぜよ。

問2 Cに対する債権譲渡についての確定日付のある証書は同月8日に、Dに対する債権譲渡についての確定日付のある証書は同月9日にそれぞれAに到達した。同じ本件債権について債権譲渡の通知が2通も届いたため、Aは、これを不思議に思い、Bにその理由を尋ねたところ、Bは、「一旦Cに本件債権を譲渡したが、その後、Cに対する債権譲渡を解除して、Dに本件債権を譲渡した。」旨Aにうその回答をした。そこで、Aは、前記Bの回答の真偽を確認するため、CとDにそれぞれ事情を尋ねる書面を送付したところ、間もなくして、Dからは、DがBから本件債権を譲り受けたことに間違いない旨の返事があったが、Cからは返事がなかった。Aは、Cに回答を催促する書面を新たに送付することも検討したが、Dから再三にわたって本件債権の弁済を求められてたこともあり、前記Bの回答のとおり本件債権はBからDに譲渡されて現在の債権者はDであると考え、Cの回答を得ることなく、Dに弁済した。CはAに本件債権の弁済を請求することができるか。

 

(刑法)

 甲(21歳、男性、無職)は、高校の柔道部の先輩であり、高校卒業後も度々食事を奢ってもらうなど面倒を見てもらっている乙(23歳、男性、無職)から、6月1日午後11時頃、携帯電話のメッセージアプリを通じて、「ちょっと用事があるから、今から出てきてくれんか」と誘われ、これに応じて乙と落ちあい、乙の後に付いて徒歩で移動したところ、同日午後11時30分頃、X社の工場の南側出入口前に到着した。工場に明かりはついておらず、出入口も施錠されており、人がいる気配はなかった。その場で、甲は、乙から「ここで見張っといて。いいものを持ってくるから。」と頼まれた。甲は、それ以前に、乙が盗みをする現場に同行したことはなかったが、友人から、「乙は、深夜工場に忍び込んで銅線を盗んできて、売って金を稼いでいる。自分も工場に連れて行かれて見張りをしたことがあるが、分け前をもらえなかった。」という話を聞いたことがあったことから、乙から見張りを頼まれた時、乙が工場から金目のものを盗み出してくるのだろうと考えた。甲は、日頃面倒を見てもらっていた乙の依頼を断れず、乙が盗みやすいように見張りをすることに決め、「分かった。」と答えた。その後、甲が南側出入口付近に立って周囲の見張りを行う一方、乙は、同出入口の施錠を解いて工場内に立ち入り、同所に置かれていた複数の銅線の束を発見し、これらを盗み出すため、そのうちの銅線の束の一つを手でつかんで持ち上げた。当時、警備会社から派遣されて工場周辺を巡回中だった警備員Y(65歳、男性)は、北側出入口から工場内に入ったところ、ちょうど銅線の束をつかんで持ち上げた乙の姿を認め、走って乙に近づき、「何をしている。警察に通報したぞ。」などと叫びながら、乙の背後からその肩に手をかけた。乙は逮捕を免れるため、銅線をその場に置き、柔道技を使ってYを地面に倒した上、Yの身体を多数回にわたって足蹴にする暴行を加えた。乙は、Yが床に倒れたままぐったりした様子となったことから、その場から逃げることにしたが、重い銅線を持ったままでは駆けつけた警察官に捕まるのではないかと考え、銅線を工場内に残したまま、走って南側出入口に向かい、付近で見張りをしていた甲に対し、「見つかった。逃げるぞ。」と声をかけ、甲とともに走ってその場から逃走した。以上の事実関係を前提に、甲及び乙の罪責を論ぜよ。なお、親族相盗例の適用や、錠の損壊の有無及びそれにかかる罪責について論じる必要はない。