副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

副検事試験への心配ごと

1 副検事試験受験に関して、質問のコメントを複数いただきました。合わせてお答えしようと思います。

2 まず、受験勉強を始められて間もない方から、「1時間でどの程度の答案が書ければ合格するのか」という質問です。曖昧ですみませんと添えられていますが、気になりますよね。分かります。

  分かりやすい目安として、字数で言うと1200〜1600字、原稿用紙3〜4枚に大半の答案が収まるかな、と思います。もちろん、問題に的確に答えていれば1000字でも合格答案になると思います。ただ、1000字で出題意図に答えるためには、出題意図を的確に読み取り、それに対する最小限の答えを見出して過不足なく書き上げる作業が必要になります。別に字数が少ないから高得点になるわけではないので、普通に書いてちょっと分量が増える方が、時間もかからず楽だと思います。

  ただ、勉強し初めの頃は、答案を書こうと思っても、書けないんですよね。何を書いたらいいかが分からない。そして、寂しいくらい短い答案が出来上がる。最初はそれで仕方がありません。大事なのは、そこからの復習です。短い答案しか書けないのは、大半が出題意図に見落としがあり、答案を書くべき視点に欠落があるからです。欠落していた視点を見つけること、そして最も大事なのが「次に同じ問題を見た時に、どう言う思考過程を辿ったら、自分がその視点に気づけるか、その道筋を見つけ、身につけること」です。最後のカギかっこの部分が、特に道を誤りやすいところです。よくないのは、ここで暗記に走ることです。こういう問題では、この論点が出てくる、と覚えようとしてしまうのが、失敗の元です。デメリットはいくつもあり① 覚えることが膨大になり、キリがない、② なぜその論点が出てくるのかを分析できず、問題の所在(条文の文言上何が問題となるのか)を指摘することができない、③ 知っている問題しか解けず、知らない問題が出るとお手上げになる、などです。副検事試験の場合、③の知らない問題が出る、という場合は、最近はあまり多くないようですが。とはいえ、「条文上、この文言(が曖昧なため、その)解釈が問題となる」という問題の所在を指摘できるようになることは、重要だろうと私は思っています。

  ただ、一方で、副検事試験の内容を見ていると、重要な部分について暗記の勉強を進めていくと、この試験を突破するというレベルでは、何とか対応できてしまうのかなあ、という気も最近はしています。コメントの質問に「マイナーな論証についても論じられるようになっておくべきなのか」ともありました。この点は、暗記をする必要はありません。マイナーな論証は、多分みんな覚えていません。ただ、本番でもしマイナーな論点が出たら(最近の傾向からは出なさそうですが)、一定数の受験生は論証できると思います。それは、その一定数の受験生は、「知らない論点についても自分の頭で考察し、問題の所在をつかみ、論証する」能力を鍛えているからです。そのレベルに達することは、素晴らしいことです。ただ、そこまで行ったら司法試験合格レベルと思いますが。

  なお、論証集に関する過去記事があります。

論証集、論点ブロックカードについて - 副検事になるための法律講座

  また、副検事試験の答案用紙についても質問がありました。どうやら、司法試験の論文試験と同じ書式を使っているようです。これは、いわゆる司法試験予備校が、書式を真似た答案用紙を売っているようです。また、法務省のHPにも答案用紙データが掲載されているようですが、メインページからは辿り着きませんでした。検索サイトで「司法試験 論文 答案用紙」とか適当に検索していると出てきました。参考まで。

3 次に、受験勉強のモチベーション維持、折れそうな心の支え方についても質問がありました。副検事試験受験生の方は、仕事を持ちながら、キャリアアップを目指す訳で、学生の身分の時の受験とは全く状況が違います。しかも、検察事務官の場合は、同じ省庁の中での昇任試験みたいなもので、失敗しても「残念でした」ですが、他省庁の方の場合は、所属庁を出て行こうとして失敗となる訳で、ちょっと居心地良くないですよね。そういう意味で、他省庁の方のモチベーション維持の方法については、私には想像するしかない世界です。ただ、現状でも公務員という仕事があり、安定した収入があるわけです。そこをリスクをとって副検事試験を考えた時には、きっとそこに「理由」があったと思います。もしかしたら、その理由について、自分でもまだ言葉にできていないのかもしれません。その理由が何なのか、それは自分が心が折れそうになりながらも頑張る価値があるものなのか、を考えることが、モチベーションの源ではないか、と思います。理屈ばかりですみません。ただ、他省庁からの副検事試験受験は、合格のハードルも、副検事任官後に検察官の仕事をモノにするためのハードルも、低くはありません。そこを目指すには、強い理由が必要だろうと思います。

  そのほか、いくつか私の個人的な思いについても質問がありましたが、ちょっと個人的なことは控えたいと思います。1点だけ、検察官としての楽しみについては、以下の過去記事を参照下さい。

閑話休題:検察官の楽しみ - 副検事になるための法律講座