副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

閑話休題:検察官の楽しみ

1 検察官になろうとする訳ですから、何か楽しいことがあった方がいいですよね。

  検察官は、何が楽しいんでしょうか。

  多分、それは、人によって大きく違うのだと思います。

  なので、ここでは、「ある人」の楽しみについてお話ししたいと思います。

2 その人は、小学生くらいの頃から、ミステリーをよく読んでいました。

  母親の影響なんですね。母親は、ミステリー中毒と言える人でした。家には、アガサ•クリスティーの文庫版がほぼ全巻揃い、そのほかにエラリー•クイーンなども本棚にしれっと並んでいるような状態で、母親は仕事を終え、家事を済ませると、ミステリーの世界に浸っていました。

  もちろん、ミステリーですから、かなり無理な設定もありました。ただ、たまに、ですが、犯人がわかる時があるんですよね。読み進めて、推理が当たっていた時の喜びといったら!これは、ミステリーを読む人にしか分からないですよね。

3 ある人が任官してから読んだ本の中に、カポーティの「冷血」というミステリーがありました。欧米では、ミステリーの傑作として有名な小説です。ちなみにカポーティは「ティファニーで朝食を」という短編の方が有名な作家です。全然毛色が違って、「何で?」と思うほどですが。

  で、「冷血」の感想なんですが。

 「事件記録じゃん。」なんですよ。

  捜査機関でもないのに、よくここまで調べたな、と思います。そしてできあがり、欧米で高評価を得た内容は!「事件記録」なんですよ。

  つまり、検察官が日々新件配点を受ける事件記録は、超有名作家の名作と言われるミステリーと同じレベルの読物なんですね。

  誤解を恐れずに言えば、「面白いに決まってる」のです。

4 「事実は小説より奇なり」と言いますが、事実の迫力は凄まじいものがあります。

  そして、事実の混沌の中で、「スジを読む」というのが、「推理」なのです。

  よく「スジを読む」と言われます。何となく、勝手に話の道筋を決めつける、というようなニュアンスで語られやすいですが、実はそうではありません。

  「スジを読む」というのは、断片的な証拠を見て、「こうなのか?ああなのか?」と思いを巡らせ、ありうる可能性を全て頭の中に巡らせる、まさに「推理」の世界なのです。

  だから、スジを読むときは、一番強いスジから一番弱いスジまで、あらゆるスジを読みます。そして、捜査を続ける中で、そのスジを絞り込んでいくのです。

  一番強いスジが否定されることもあります。捜査の結果、判明したことならば、仕方がありません。ただ、推理が捜査によって裏付けられた時には、…名探偵の気分ですよね。そして、そういう経験は、何度もあるものです。

  ボーッとしてたら見過ごすような事実を、推理によって見極め、的確な捜査を実施し、証拠によって裏付ける。これが「検察官の醍醐味」ですね。

5 ちなみに、「スジ読み」が必要な事件は、本部事件とか重大事件に限りません。

  むしろ、量刑が問題の自白事件の中にこそ、「ちゃんとスジ読めよ」と思うような事件が多いですよね。「ネットオークションで転売している職業的な万引きじゃないの?」みたいな事件が、あっさり見逃されているのを見ると、色々思うところがあります。