副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

論証集、論点ブロックカードについて

1 答案作成の際の論証を、論点ごとにあらかじめまとめておくことがありますね。

  論証集、論証ノート、論点メモ、色んな呼び方があると思います。

  私が受験をしていた時は、「論点ブロックカード」と呼んでいました。

  今日は、これにの功罪について、話してみます。

2 私の受験時代は、これが流行ってたんですよね。

  理由は「某有名司法試験予備校の看板講座の中心的存在だったから」だと思います。

  当時の受験生は、みんなこぞってブロックカードを作っていましたね。中には、精魂込めて作ったブロックカードファイルを自習室から持ち去られてしまい、「ぜひ返して!」という悲痛な張り紙を貼っているケースを見たことがありました。無事に返ってきたようですが。予備校の影響力おそるべしです。

  かく言う私も、その看板講座を受講して、論点ブロックカードを手にしていたクチでした。

  私の場合は、自分で作るまではいかず、講座が提供する出来合いのブロックカードを整理していただけでしたが。

  そして、「これが一通り頭に入ったら、きっと司法試験に合格できるんだ!」などと夢を見ていました。予備校の思惑通り、親に大金払わせて夢を買っていたカモでした。

  法律家の能力は「問題点抽出能力」であり、論点ブロックカードが一通り頭に入ったところで、「問題点抽出能力」が向上するわけはないですよね。

3 その看板講座の講師が、授業中に言っていました。「論点ブロックカードは、答案を何枚も書く中で、繰り返し出てくる論点について、同じことを何回も繰り返し書くのが時間の無駄なので、その部分だけを切り取ってまとめたものでした。」この講師は、暗に「これだけやるのは違うんだよ。」と教えてくれてたのだと思います。予備校は「これだけやればオッケー!」という夢を売っていたので、講師ははっきり言うわけにはいかなかったんでしょうね。

4 論点ブロックカードの「罪」は、①個別の論証だけ覚えて、問題点抽出能力が不十分なまま、それっぽい論点について記憶している論証を並べて答案を書くようになる、②細かな論点についてまで、論点ブロックカードを作るようになる、というのが、大きなところでしょうか。

5 ①は、かつて「論点主義」などと予備校批判がなされた部分と思います。答案を見ると分かるんですよね。問題点抽出能力が高くないので、「なぜその部分が問題になるのか」という記載、指摘が、とても薄い、ひどい場合は記載がないんです。そして、いきなり「この点が問題となる」と理由なく論点を書き始めている。論証だけは頭に入っているので、それっぽいことは書いてある。予備校の答練とか、問題点見え見えの問題だと、これでも対応できるし、論証内容が高度だと、高評価を得たりするパターンです。トレーニングチャンピオンという奴でしょうか。練習強いけど、本番弱い。本番は、「なぜその部分が問題になるのか」という問題点抽出能力部分こそが、最も大きく評価される部分な訳ですから、そこを鍛えないまま論証内容だけ鍛えたって、本番では通用しませんよね。

6 ②は、勉強する側の弊害です。まず、暗記に力点を置いてしまい、自分の頭で考えなくなる。また、勉強を進めようとすると、考える力を深める方向ではなく、「細かい論点にまで手を広げる」方向になりやすい。本人は全力で頑張ってるのに、走っていく方向がゴールと違う。走るほどゴールからの距離が遠くなる。いわゆる「ドツボにはまる」という奴ですね。多分、多くの人は、途中で何らかのきっかけで、「ゴールに向かってない!」と気づくのでしょうが。

  私の場合は、元々暗記が大の苦手だったことから、「論点ブロックカードを一通り頭に入れる」という作業を進行できませんでした。なので、「これは自分には全く向かない」という形で、予備校から買ってしまった夢はしまっておき、自分の能力を使って合格する方法を考えるようになりました。やはり何事も「自分の頭で考える」というのは大切ですね。これが、いわゆる「自立」という奴でしょうか。

7 論点ブロックカードの「功」の部分は、一定の使い方をした場合に現れると思います。それは、先ほどの講師の言った通り、「答案を書く(答案構成も含みます)中で、繰り返し出てくる論点に絞って、論点ブロックカードを作成する」場合です。この場合、「頻出論点が何か分かる」「頻出論点に限って、論証内容を高められる」というメリットがあります。憲法の「三権分立」なんて、統治では必ず書くのですから、これは論証をあらかじめ良く考えておいた方が、より良いです。しかも、できれば「六法に記載されている内容を中心に論証をまとめる」と、覚えることが少なくて済みます。大事だと思うのは、「論証集を作る、という手間を、出来る限り削る」意識をつことです。論点ブロックカードが怖いのは、これを作っている時に、それなりの「頑張ってる感じ」がするところです。勉強している感じがするもんだから、つい論点ブロックカードを作ること自体が目的化してしまうんです。ただ、実際の生産性は、かなり低い上に、「ゴールから違う方向に行きやすい」という点、気をつけてください。