副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

検察官の仕事の厳しさ

0 コメントを下さる方、ありがとうございます。ご質問には、概ね2週に1回という更新ペースの中で、順番にできる限りお答えしたいと思います。しばらくお待ちください。また、質問ではない感想のコメントもたまにいただきます。楽しみに読んでおります。

1 今回は、検察官の仕事の厳しさについて、いくつか具体的な点のご質問をいただきました。なので、質問内容を含め、その他のことにも広げながら話します。

2 まず、「検察官は激務で休みも取れないのでは?」というイメージがあるようです。これは、今から10年とか20年前は、本当にそういう人も結構いたようです。30年前はもっとひどかったとか。時代を遡るほど、より激務だったと思います。

  ただ、今は大分雰囲気が違うようです。国家公務員は、残業時間の規制があります(月80時間を超えると、とか、月45時間が数か月続くと、ってやつです。)が、検察官もこれの対象です。もちろん、捜査も公判も人が相手の仕事なので、時間のコントロールを完全に自分中心にはできず、一定の残業は避けられません。ただ、家に帰れないほど忙しいとか、土日休めないとかいう状態は、通常勤務の中ではないようです。むしろ、普段の仕事をそんなギリギリの状態でやっていたら、本当に大変な仕事が降ってきた時に対応できなくなってしまいます。通常勤務は、若干の余裕を持ってできるのが望ましいでしょう。

3 次に、被疑者、被告人を相手に身の危険を感じる場面についてです。これは、頻度は少ないものの、なくはありません。検察官を対象とする公務執行妨害事件は、年間数件くらいは起訴されているようです。とはいえ、取調室か法廷が現場になることが多く、取調室の場合は、デスクマットを投げられたとか、調べ室の机をひっくり返されたとかいうものが多いようです。これが法廷になると、ひどいのだと殴られたとか蹴られた、というのもあるようです。これらは、常にそういう可能性を頭に入れて、油断なくしていれば、避けたり防御できると思うのですが。取調室に余計なものを置かないとか、法廷では常に被告人を視野の片隅に入れておくとか。犯罪の最前線に立っている警察官のことを思えば、検察官の仕事上の危険なんて、何とかコントロールできる範囲だろうと思います。

4 一方、検察官の仕事の厳しさとして強調しておきたいのは、「泥臭い仕事である」ということです。被疑者、被告人は、やってはいけないことを、それと知りながらやってしまう人がほとんど(無罪推定なので全員ではない)です。また、被害者は、全く落ち度がないのにいきなり犯罪に巻き込まれて傷ついた人や、被疑者、被告人の知り合いであるトラブル相手のことが多いです。話が犯罪なだけに、どうしても人が身も心も傷ついたり、感情がむき出しになったり、人の欲望とかのダークサイドが絡んだりしやすいのです。事件が検察庁に来ている、という時点で、誰かが満足するような解決の道は、ほぼありません。そんな道があるなら、そもそも話が検察庁に来ません。検察庁に来る事件は、その時点で、選択肢はどれも条件の厳しいものばかりです。検察官は、こういう事件を仕事として取り扱うのです。

  しかも、捜査に関しては、起訴すれば裁判所、不起訴にすれば最後は検察審査会からの厳正なチェックを受けます。捜査を担当する検察官は、起訴も不起訴も、どちらにせよ自分のできる限り力を尽くして、正しい判断をするしかなく、逃げ道はないのです。

  法律家というと、きれいな仕事に聞こえますし、書面を扱うことが多く物理的にはきれいなことが多いのですが、精神的には泥臭い仕事であることは、覚悟した上で任官を目指してほしいと思います。

5 また、ご質問では「捜査等をしていない他省庁の者が使い物になるでしょうか」ともありました。警察官の中でも刑事のように、日々刑事事件を取り扱っている方を除いては、司法警察員といっても、刑事事件の取り扱いは業務の中心ではないでしょう。そういう他省庁の方と、日々刑事事件を取り扱ったり検取事務官の経験を持つ検察事務官からの副検事任官者を比べれば、かなりのハンデがあることは間違いありません。甘いことを言うつもりはありません。そのような他省庁からの副検事任官者がどうするべきか。それは「任官してからものすごく頑張って検察官の仕事をモノにする」しかありません。検察事務官からの任官者と同じペースでは、ハンデの差は縮まりません。もっと頑張るしかないでしょう。とはいえ、例えば検事の任官者は社会人経験のないものが多く、ほぼ全員刑事事件の素人ですが、大半が数年で一人前になります。数年頑張れば、何とかなるものだ、ということだと思います。他省庁の方は、検察事務官に比べてハンデがあることを自覚し、任官後も数年間は全力で頑張る覚悟を持つべきです。本人が全力で頑張っていれば、それは周りもわかります。そして、全力で頑張っている人が出した結果なら、きっと受け入れられるはずです。

  なお、刑事事件に関する法律家の能力は、初歩段階では「読み込んだ事件記録の量」に比例すると思っています。法律家として事件記録を読む、ということ自体が刑事事件に関する経験値になるという感じでしょうか。普通は、配された事件の記録だけを読むでしょう。そこを、普通のことだけでなくいろいろ手を広げて事件記録を読むことは、「ハンデの差」を詰める一つの方法かな、と思っています。