副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

副検事と55歳の昇給停止

0 コメントや質問、ありがとうございます。他省庁の方から、楽しみに読んでいる旨と共に「研修」誌を自宅に郵送してもらっている、というコメントをいただきました。確かに研修誌の裏表紙には、第三種郵便認可(密封しない雑誌について安く郵送できる認可)と記載があります。問い合わせたら送ってくれるんじゃないでしょうか?連絡先も裏表紙に記載があるので、書いちゃってもいいですよね。誌友会事務局研修編集部、電話047-380-5211、だそうです。「振替」としてゆうちょ銀行の番号っぽいものも書いてあるので、多分ここに代金(月1冊300円弱)を支払うのだと思います。

1 他省庁所属の副検事志望者の方から、副検事になっても、55歳以上は昇給停止になるのか、について質問をいただきました。「40歳を過ぎてからの受験であり、気になる」とのこと。全然遅いとは思いませんが、気になるものは気になりますよね。できる限りお答えしようと思います。ただし、くれぐれも「ネット上に転がっている無責任な意見の1つ」であることは忘れないでください。

2 最初に法律等の内容を確認して、話を整理したいと思います。

  国家公務員の昇給に関して、一般職の職員の給与に関する法律(以下「給与法」)の8条8項1号により、55歳を超えた職員は、勤務成績が特に良好な場合に限り昇給が可能とされています。逆に「特に良好」でなければ昇給しません。検察事務官だと、事務局長は昇給の余地があるものの、首席捜査官とか検務監理官の方は、昇給しない方が大半だと思います。これが、一般に「昇給停止」と言われているものですが、正確には昇給の制限なので、この記事では、これを「昇給制限」と呼びます。

  一方、検察官の俸給等に関する法律(以下「俸給法」)は、1条において、「一号若しくは二号の俸給を受ける副検事については、給与法による指定職俸給表の適用を受ける職員の例により、その他の検察官については、一般官吏の例による。」と定めています。

  先ほどの給与法8条8項は、昇給に関する同条6項に関して昇給制限を定めています。ところが、同条6項は、「指定職俸給表の適用を受ける職員を除く」と定めています。なので、副検事一号と二号の人は、55歳を超えても給与法8条8項1号による昇給制限を受けない、と解釈されると思います。実際、副検事一号の人が特号に昇給するのは、60歳を超えてから(副検事の定年は今は63歳です)のことが多いです。このことからも、二号以上の副検事には55歳を超えても昇給制限はないと思われます。ただ、特号に昇給する人は、勤務成績も「特に良好」でしょうから、絶対とは言えないのですが。

  一方、三号以下の副検事の人は、「一般官吏の例による」訳ですから、55歳を超えると、昇給制限の対象になりそうです。ただ、この点については、実際に副検事三号以下で55歳を超え、昇給制限を受けた、という実例を見聞きしたことがありません。55歳を超えている方は、知る限り皆さん1号か特号でした。なので、この点は、「法律を見る限りそういうことになるみたい」という想像でしか物が言えません。

  以上を整理すると、「55歳を超えるまでに副検事二号になってれば、昇給制限は受けなさそう」と考えられます。

3 じゃあ、どうなったら55歳を超えるまでに二号副検事になれるのでしょうか。

  ここで、「検察官の初任給及び昇給に関する準則」を見てみましょう。ネット上に転がってますが、平成19年のものが、見つけた中で最新のものでした。これが今でも適用されているのかは知りませんが、これに基づいて検討してみましょう。この準則は、俸給法3条を受けて定められたものです。準則3条に昇給期間について定めがあり、この期間を良好な成績(=普通)で勤務すると昇給する、と書いてあります。そして、副検事は三号、四号、五号とも昇給期間は2年6月です。ということは、53.5歳前に三号、51歳前に四号、48.5歳前に五号になっていれば、それから良好な成績で勤務すれば55歳を超える前に二号に辿り着きます。

  そして、どうしてなのか理屈はよく分からないのですが、検察事務官の場合、「同じ年齢・年次だと後から副検事任官した方が号俸が上になる」という謎の現象があります。これは前にも記事に書いたことがありました。それを考えると、ちゃんと計算したわけではないのですが、副検事に任官さえすれば、昇給制限に引っかかることはないのではないか?と思ったりします(責任は取れませんが。)。

4 以上、ネット上に転がっている情報を元に検討してみました。

  なお、副検事の初任給は、準則2条に定めがあり、これをそのまま読むと、「任官直前の俸給月額を副検事の俸給表に当てはめ、一番近い上の号」になるように読めます。ただ、何となくですが、実際に副検事に任官される際には、もうちょっと上の号俸で任官しているんじゃないかな、という印象があります。どうしてそうなるのかは、よく分からないのですが。

  とまあ、色々書いてみましたが、一番良いのは「バリバリ勉強して早く合格すること」なのは、変わりません。是非頑張ってください。

5 ちなみにですが、副検事三号から二号に上がるときに、俸給月額が8万円近く上がります。

  そう聞くと気分がアガるかもしれませんが、ちゃんと理由があります。副検事二号からは、指定職扱いになるため、ボーナスの計算方法が変わって、金額が抑えめになるようです。その分俸給月額が上がり、年収としてみると、まあまあの昇給、ということになるようです。

  とは言え、ボーナスはもらえば終わりですが、俸給月額は、ちゃんと退職金の増額にも貢献してくれます。どうせなら、俸給月額が上がってくれる方が良いですよね。