副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

副検事の地方裁判所公判立会

1 副検事区検察庁の所属です。検察庁法16条2項に「副検事は、区検察庁の検察官の職のみにこれを補するものとする。」と定めてあります。「のみ」とか強調してありますね。しかし、副検事は、地方検察庁の事件も捜査します。薬物犯罪なんかは全て地検事件です。これは、検事正の事務引取移転権(検察庁法12条)により、副検事に地検の「事務取扱」資格が付与されているからですね。「そんなの要らないよ。」と言っても、どうしてもついてきます。無い人を見たことがありません。

  優秀な副検事が強盗致傷の共犯事件の身柄とか配点されて「俺、区検検察官なのに」とぼやくのは鉄板のお約束です。

2 なお、地検と区検は、地方裁判所簡易裁判所に対応しています。そして、簡裁が審理できる刑事事件は裁判所法で限定されています。そのため、区検事件も限定され、薬物犯罪とかは区検には送致されないのでしょう(多分。とはいえ、区検事件も舐めてはいけません。被害額数百万円の窃盗事件とかでも区検に送致されたりします。)

  検察官からすると、地検も区検も大差ない感じがします。むしろ、要らん区別をすることで、過誤の元、という印象すらあります。ただ、裁判官にとっては、簡裁の存在は重要だそうです。特に民事事件については、簡裁が引き取ってくれている部分が多いそうです。そういうのが全部地裁裁判官に回ってきたら、やってられない、ということのようです。刑事も略式命令は全部簡裁判事がやってますし。そして、検察庁は裁判所に対応して設置することになっているので、区検の存在は必須なのです。

3 検察庁内部の問題については、事務引取移転権で、副検事に地検事件をお願いできます。では、対外的にはどうでしょうか。副検事は地裁の公判に立会できるのでしょうか。

  昔、「法廷で被告人から『副検事区検所属だから地裁の公判に出るのはおかしい』と主張され、即答できず、裁判官から宿題にされた。」という副検事がおられました。裁判官もその場では根拠が分からなかったそうです。この問題は、法律には規定がないんですね。なので、法律だけ見ていると、この被告人が言っていることも一理あるように見えてしまう。

  この点は、判例で解決されています。東京高裁S31.4.14(う)173号が、副検事について、地裁の法廷に立ち会うことができる旨を判示しています。内容を読んでも、理由があるんだかないんだかよく分からない判決なのですが。しかし、最高裁判例がない中での高裁判決ですから、刑事訴訟法上は立派な「判例」です。覆すには最高裁大法廷で審理しなければなりません。実際に争われたことがあるんですね。この事件は、被告人側が控訴理由として、副検事が地裁法廷に立ち会った点を「訴訟手続の法令違反」と主張したようです。

4 こうして、無事に副検事の方も地裁法廷に立ち会うことができるのです。なお、先程の宿題を出された副検事は、その後、前記高裁判決を印刷したものを、お守りとして持参して地裁法廷に立ち会っていたそうです。