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そんなブログ沢山ありそうですが…

憲法その6(令和4年答案構成)

1 さて、この問題はどうでしょう?

「集会を開催するための公民館の使用許可申請地方公共団体が不許可とすること及び集団行進を行うための公道の使用許可申請都道府県公安委員会が不許可とすることに関する憲法上の問題点について、それぞれ判例に触れながら論ぜよ。」

  判例を正面から問う問題です。「勉強しない」をポリシーとしている私にとっては、かなりハードルが高いです。こんな判例、当然覚えてはいません。ただ、多分かつて勉強した内容は、判例と同じなのだろうと思います。そう信じて、「判例同旨」のマジックワードでどこまで乗り切れるか、やってみましょう!

2 まず、全体のイメージです。

  表現の自由の問題です。そして、公民館使用許可と公道使用許可の比較です。一般論ですが、こういう論文の問題で比較が出てきたら、「似ているけど違う」「違うけど似ている」のどっちかで論じるのが鉄則です。今回のは、もちろん「似ているけど違う」なんでしょうね。そして、どちらも公的機関が、表現の自由行使のための施設利用について、不許可処分をした、という点が共通しています。違いは、「公民館は外部から完全に隔離された施設で、公的機関がその全体を完全に管理している」「道路は、オープンスペースで、外部との隔離が完全ではない。公的機関がその全体を完全に管理している訳でもない」という点でしょうね。そのため、公道の方が不許可処分を出しやすい、という結論になりそうです。ただ、それでも不許可の理由は、表現内容自体を制約するものであってはならない、とか、そんな感じになりそうですね。知らない判例を知ったかぶりする訳ですから、あくまで守りに徹して、ボロが出ないようにしたいです。では行ってみましょう!いつもの通り「麓から登るイメージ」「知らない問題を解くように」「問題提起を詳しく」です。

3 問題提起です。ここは判例は関係ないので、自分の思うままにグリグリ書けます。攻めどころですね。

「1 本問では、公民館における集会開催や、行動における集団行進の公的機関による不許可処分が問題となっている。いずれも表現の自由(憲法21条)を制約するかのように見える処分であり、これらが違憲か否かが問題となる。」

  、、、うーん、あんまり攻められませんね。ま、次行きましょうか。

表現の自由は、自己の意見を表明する自由を保障するものである。民主主義を掲げ、治者と被治者の自同性を根幹に置く憲法(前文)の精神を実現するためには、主権者たる国民が主権を行使するに際して、様々な意見交換をすることが不可欠である。独裁国家において、権力者が権力維持のために言論を弾圧するのも、表現の自由が持つ威力の強大さにその理由がある。従って、表現の自由日本国憲法の保障する人権の中でも、最も手厚い保護がなされるべき自由であると認められる。」

とか、表現の自由の重要性を論じてみました。適当に書いてみたので、こんな感じで良いのか、正直なところよくわかりません。

4 次は違憲審査基準の話でしょうかね。

「2 以上のような表現の自由の重要性に照らせば、国家権力等の表現の自由に対する制約が違憲か否かを判断するにあたっては、その目的がやむに止まれぬ必要性に基づくものであり、その手段が必要最小限の制約にとどまるか否かによって判断されるべきである(厳格な審査基準、判例同旨)。」

  と、一応判例同旨を書きましたが、出題意図はここではないんでしょうね。

5 個別の当てはめです。

「3 集会開催のために公民館を使用する許可申請地方公共団体が不許可処分とすることについて検討する。公民館は、地方公共団体が管理するものであって、しかもその室内で行われる活動が外部に何らかの悪影響を及ぼすことは、通常は考え難い。従って、公民館使用の不許可処分は、通常は「やむに止まれぬ必要性に基づく目的」であるとは認められない。また、使用の不許可処分が必要最低限の制約であることも考え難い。当該団体が、何らかの犯罪を企てていることが明らかなような、極限的な場合に限って、「やむに止まれぬ必要性に基づく目的」による「必要最低限度の制約」であると認められるにすぎない(判例同旨)。」

でどうでしょう。判例同旨かどうか知りませんが、そう書くしかありません。知ってる人は、判例の名前も書いて「知ってるよ」とアピールするところでしょう。

6 2つ目の当てはめです。

「4 次に、集団行進を行うための公道の使用許可申請を不許可処分とすることについて検討する。公道は通常、一般市民の交通の用に供するものである。これを集団行進に利用することは、一般市民の交通をせき止めて集団行進を行うことにより、一般市民の耳目を集める点にその目的があると認められる。もちろん、これも表現の自由の行使であり、最大限の保障がなされるべきである。しかし、その行使が社会に一定の影響を与えるものであることから、公民館の使用に比して、強い制約がなされる場合も考えられる。

  公道の交通に与える影響が強い場合、例えば平日の昼間に幹線道路を長時間全面封鎖するような使用許可申請については、これを不許可とすることも、一般市民の交通の利便という公共の福祉を守るという、やむに止まれぬ目的のために、必要最低限度の制約として憲法上許されると解する(判例同旨)。

  一方、休日に短時間、交通量が極めて少ない公道で、道路の片側のみを利用して集団行進をするための使用許可申請については、これを不許可処分とすることは、目的が止むに止まれぬとも認め難いし、不許可処分が最低限度の制約とも認め難いことが多いと思われる。しかし、それでも、公道を使用する以上一般市民の生活に一定の影響を与えることは十分考えられ、個別の事情、例えば「当日に地域の花火大会が予定されており、平時に比して交通量の増大が強く見込まれる場合」などは、不許可処分も合憲と認められることもあり得る。

  また、不許可処分が、一般市民の交通の利便とは無関係に、集団行進において訴える内容の不適切さを理由とする場合には、通常、その目的が止むに止まれぬものとは認め難い。不許可処分が憲法上許容されるのは、訴える内容が重大犯罪を呼びかけるような、極限的な場合に限定されると解される。」

という感じですかね。

7 最後に、両者の比較です。

「5 このように、同じ表現の自由であっても、公民館の使用と公道の使用で差が生じるのは、公民館の使用が一般市民の生活にほとんど影響を与えないのに対し、公道の使用は一般市民の生活に強い影響を与えるという、「公共の福祉」との衝突場面の有無に違いがあるからである。憲法は、13条において、基本的人権が公共の福祉との調和の下にあることを定めており、公共の福祉との衝突の有無が、使用の不許可処分の合憲性判断に違いを生じさせたものである。」

  まあ、当たり前なんですけどね。でも、「判例同旨」しか書けなかった身としては、ちょっとアピールしておきたいところです。

8  これでは、「判例に触れながら」という出題意図に答えていないことは明らかですが。それでも何とか守れたでしょうか。結果が10月頃に研修誌に出るのを待ちましょう。