副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

副検事の役割

1 副検事に求められている役割はどのようなものでしょうか。

  人それぞれ、色んな考えがあると思います。

  ちょっと、記事を書きながら私も考えてみます。

2 法律上は、検察官は5種類定められていますが、実際に事件を担当する検察官は、検事、副検事と、検察官事務取扱検察事務官(通称検取)がいます。

  検事をP、副検事をSP、検取をPGと呼ぶことがよくあります。Gは、検察事務官の略称なので、PGで検取なのでしょうね。

3 このうち、検取は、件数が多く、比較的定型的で刑責が軽い事件を担当することが多いです。交通違反や、傷害結果が軽い交通事故、軽犯罪法違反や銃刀法違反、万引などの一般刑事事件が多いです。刑責が軽い、というのは、罰金までくらいを指します。ただし、検取は区検察庁の検察官の事務を取り扱えるので、法律上は、簡易裁判所に管轄がある事件(窃盗など)なら、公判請求できますし、簡裁の法廷に立会することもできます。実際には、法廷に立ち会うのは副検事ですら最初は怯むくらいですから、検取の方が法廷に立会するのは、かなり勇気のいることでしょうね。

  なお、一部の地検では、検取の方に身柄事件が配点されることもあります。違法薬物の所持使用など、参考人取調べが不要な事件が多いようですが、中には否認事件もあり、検取の方が否認の被疑者から取調べで自白を得たケースを見たこともあります。

  検取の方がここまでやる、ということは、副検事の役割は、当然これを超えるもの、ということになりますよね。

4 次に検事について見てみましょう。検事も、任官直後は比較的軽微な事件を担当するところから始まります。ただ、検事の場合、数年間のうちに飛躍的な成長を求められます。昔は、教育してもらえる期間は3年目までで、4、5年目は能力を判断される時期であり、6年目以降は「シニア検事」と呼ばれて、一人前扱いでした。一人前な訳ですから、人が亡くなったような重大事件を「よろしく。まかせたよ。」と配点される訳です。実際は、人によって能力の高低はまちまちなのですが、捜査、公判の中で各人の力量というのは概ね適切に見抜かれて、力量に応じた(やや負荷の重い)難易度の事件が配点されます。ただ、中にはとても複雑困難な事件というのがあるので、検察庁には、どうしても高い捜査、公判能力を備えた検事というのが、一定数は必要なのです。そのため、昔は、一部の検事が壊れるのを覚悟の上で(だと私が想像しているだけですが)、スパルタな教育をしていました。

  ただ、今は、そういう時代ではなくなり、若手検事に対して、短期間で半ば無理矢理成長させるような指導はしなくなったそうです。その分、教育にかかる時間が長くなっており、検事任官7、8年目くらいまでは教育期間という感じでしょうか。

5 ようやく副検事の番です。副検事の役割は、検取と検事の間かな、と思います。もちろん、重なり合う部分もあります。中には、そこら辺の検事よりよっぽど能力の高い副検事もいます。裁判員裁判員対象事件である強盗致傷の身柄事件を配点されて「なんで。俺副検事なのに。」とブーブー言いながら、あっさり捜査を遂げてしまうような人もいます。また、主任ではないものの、複雑困難な殺人事件の応援検察官として、共犯者の身柄取調べを担当した副検事もいます。財産犯だと、業務上横領事件の決裁に行き、決裁官から「何でこんな難しいのやってんだ?」と聞かれて困るような副検事もいたそうです。もちろん、副検事全員がこのような事件を担当させられる訳ではありません。能力は個人差があり、能力に応じた事件が配点されます。ただし、検取の方よりは捜査能力が高くないと、さすがに立場が無いかな、とは思います。

  あとは、公判立会ですね。副検事が公判専従になる機会はそれほど多くありません。ただ、多くの地検では、主任立会といって、捜査主任がそのまま公判も担当します。つまり、否認事件を起訴したら、公判で証人尋問等の立証活動をすることになるのです。いきなり最初からは難しいです。大抵は上司が若手検事をヘルプに入れてくれますが、出来るだけ早く独り立ちしましょう。

6 なお、他省庁から副検事試験に合格された方については、4月に副検事に任官する前に、2か月ほど、検取として地検で働いてもらい、刑事事件捜査、公判をオンザジョブトレーニングで学んでもらう場合があるようです。全員がそうなのか分からないので、やや歯切れが悪くてすみません。1月末で前職を退職し、2月1日から地検勤務が可能な人は、そのようなこともあるようです。私が聞いたケースでは、自宅近くの地検で検取をして、4月の任官は全国異動なのでどこに行くかは運次第、という形でした。