副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

供述調書の作り方

1 以前、検察庁法の教材について質問して下さった方から、無事に研修教材検察庁法を入手できた旨、連絡がありました。なんと、最終的に国会図書館において複写の手続をとられたそうです。大変なお手数をおかけしました。別に役所として内緒にするような内容でもないし、もっと普通に購入できるようにすればいいと思うんですけどね、、、。

2 ところで、検察庁以外の他官庁出身の副検事の方が、任官後の業務の中で苦労するのが、「供述調書作成」だそうです。検察官は、被疑者、被害者や目撃者等参考人を取り調べて供述調書を作成するのが、日常的に行なっている当たり前の業務です。ただ、こんな業務は、検察官のほかは警察官、しかもいわゆる「刑事」くらいしかしません。他官庁の方も司法警察員の資格をお持ちだったりすると、司法事案の立件送致に際して供述調書を作成する機会があると思います。ただ、司法事案って、そんなに多くはないですよね。

3 そこで、今日は、検察官がどうやって供述調書を作っているのか、というお話です。

  まあ、取り調べで人の話を聞いて、それを供述調書にまとめるだけですが。

  ただ、検察官の供述調書作成は、「面前口授」が大原則です。これは「取り調べで話を聞き終わったら、その場で、相手の面前で、検察官が供述調書に記載すべき内容を口に出して言葉にする。それを側に座っている立会事務官が聞き取り、パソコンに入力する。」という作成方法です。

  もちろん、口授の最中に、内容を相手に確認することもあります。また、相手には、「違ってるところがあったら、途中で止めていいから、言ってください。」という旨を伝え、大事な部分は、「これで間違い無いですか?」と確認したりします。

  長年検察官をやっている人は、当たり前のようにできるようですが、最初のうちはなかなかうまくいかないようです。

  ちなみに、刑事さんは口授はしないそうで、研修などで検察庁に来られた刑事さんが驚く定番の一つが、この面前口授だそうです。

4 面前口授の大変な部分を、ちょっと検討してみましょうか。

  まず、取り調べた内容を短期的に記憶しておく必要がありますね。最初のうちは、メモを取りながら取り調べてもいいようです。慣れてくれば、そのうちメモを取らなくても、全部覚えておけるようになるそうです。

  あと、口授の場合、途中で前の方に戻って大幅に書き換える、というのは大変なので、口授の最初から、供述調書全体の構成がある程度できている必要があるそうです。最初のうちは、「こんな構成で供述調書を作ろう」という骨子をメモしておくと、比較的作りやすくなるかも知れません。

  そのほか、「刑事さんが作った供述調書の上塗りでは意味がない」というのもあります。法律家である検察官が、刑事さんとは別に供述調書を作成する意味は、「起訴不起訴の判断に必要なこと」「刑事裁判になったら法律上必要なこと」など、刑事事件を法律的に検討した結果、必要な事項を録取する点にあります。最初は、刑事さんの供述調書とあまり変わらないものしかできないかも知れません。それでも、「法律家としての仕事の成果」を盛り込もうと心がけることを継続すれば、そのうち良い検察官調書が作成できるようになると思います。

5 以上が供述調書の作り方です。ただ、技術を身につけるのも大事ですが、技術は、中身が伴ってこそ生きます。記録を良く読み、記録に現れてこない見えない部分を見通し、必要な補充捜査を遂げ、良く関係者、被疑者を取り調べる、という基本的な事項を着実に積み重ねることが、当たり前ですが大事なことなのでしょう。