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そんなブログ沢山ありそうですが…

答案採点について

1 昔、司法試験に合格した後で、山ほど答案練習会の答案を採点したことがありました。いろいろあって、答案採点だけで生活していたこともあったんです。

  収入から逆算して、一夏で3000通つけたことがあったのは覚えています。結局、全部で採点したのは、何千通くらいになるでしょう?1万までは行かないと思いますが。

2 もう大昔の話ですし、旧の司法試験時代のことなので、話してもOKと思います。

  採点基準は、あってないようなものでした。一応、問題の解説(受講生に配るのと同じやつ)を渡されるだけで、点数の基準も特になかったですね。司法試験の本試験は、ちゃんと「配点表」みたいのがあるような噂を聞きました。多分、「この論点に触れてあったら何点、ちゃんと検討してあれば何点」とか決まっているのでしょう。(これは、私の勝手な想像です)

  旧の司法試験は、1問当たり40点満点で、本番は細かい配点を積み重ねて点数が決まるようですが、予備校の答案練習会では、ほとんどの答案は、22〜26点におさまっていました。まれに27、28点が出るくらい。悪い方も20、21点というのをつけたことも極たまにありました。

  レベル感は、22:悪い、23:やや悪い、24:可も不可もない〜やや良い、25:良い、26:かなり良い、という感じ。ポイントは、24の幅がものすごく広いことです。受験生だった頃は、「24点だ。もうちょっとで25点!」とか思ってましたが、実際は24点の下の方だった答案が多かったのかもしれません。

3 受験生だった頃、答案の採点コメントを見て、何か向上のヒントを掴もうとしていましたが、結局何も得られませんでした。自分で採点をするようになって、その理由がよく分かりました。

  まずそもそも、答案練習会の問題のレベルが、本試験に比べて圧倒的に低いことがありました。この「低い」というのは、「受験生の問題抽出能力を判定するだけの深み、つまり『考えが浅いと問題点に気づかないけど、深く考えれば問題点に気づく』という要素がほぼ含まれていない」という意味です。

  まあ、予備校の答案練習会の試験問題なんて、ちょっと前に司法試験に合格したばかりのアルバイトが、たいした時間もかけずに作った程度のものです。しかも、作成者以外に、その中身を吟味したり練り上げたりする人は、ほぼいないでしょう。わたしは、答案練習会の問題作成に直接関わったことはないので、遠くから見ていただけですが。問題作成に興味を持ったことはありましたが、1問作って、解説も準備して1〜2万円とか、かなり安かったので、「普通にバイトするか、採点している方がラク」と思い、手を出さなかったのです。、、、もうちょっとくらい高かったかな?昔すぎて記憶が曖昧ですが、「安すぎ」と思ったのは間違いありません。

  そういう深みのない問題だと、受験生に何か指導しようと思っても、「問題点抽出能力」の出番がない問題なので、指導のしようがないのです。私自身、合格後に知り合いから、答案練習会の問題を題材に、問題点抽出能力の指導を頼まれて引き受けたことがあるのですが、どうしても指導がうまく行かなくて「どうしてだろう?」とかなり考えたところ、ようやくこの点に気づいたものでした。

  そのほか、答案採点で指摘できるのは、せいぜい書き振り、論点漏れの指摘くらいです。本来は、全体の構成とか、そういうあたりに言及できれば良いのですが、それを手書きの赤ペンで書き切るのは本当に大変です。1通何百円のところ、1通に1時間かけるわけにもいきません。

  そんなわけで、答案採点のコメントに何かを求められても困る、というのが、採点側のホンネになります。

4 自分の答案を、1番真剣に検討してくれるのは、実は「自分自身」だと思っています。残念ですが、他人の答案をそこまでのテンションで採点することは、普通はありません。なので、勉強の中間的な目標として、「自分自身の答案を自分でちゃんと採点して、自分自身を鍛えるだけの力量をつける」というのがあると思います。

  私自身は、1度だけ、仲良くしていた後輩が、論文試験直前の答案練習会の受講料を節約するために、私に採点を頼んできたのについてだけは、全力で本気で採点したことがありました。私が採点のために予備校からもらった解説(問題文付き)を後輩にあげて、週に1回くらい彼の自習室に行き、書きためた答案を採点する、という形でした。これが実現したのは、彼とはかなり親しかったからです。普通はそこまでやりませんよね。幸い、彼はその年に合格しました。

5 余談ですが、答案採点をしていた際、一番楽チンだったのは、通信教育で提出された答案の採点でした。みんな、何か資料を見ながら書いてくるので、答案が何十枚あっても、どれもこれも金太郎あめのように、ほぼ同じような記載なのです。

  したがって、1通採点したら、あとは同じコメントを繰り返し書くだけ、という楽チンモードになるのです。通信の採点に当たったらラッキー、てなもんでした。