副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

口述試験について

1 昔の司法試験では、最後の面接試験を「口述試験」と呼んでいました。

  憲法民法、刑法、商法、刑訴法(選択)、刑事政策(選択)です。刑事政策の口述があったのかどうか、最早記憶に残っていませんが、ほかのはあったと思います。

  副検事試験でも、最後に面接がありますよね。同じ形式なのでしょうか。案内をみると、科目ごとの口述があるように読めますが。

2 昔の司法試験は、口述まで行けば合格率は90%を越えると言われていました。なので、親は論文合格の時点で大喜びでしたが、口述が残っているこちらはたまったものではありません。かえって「ここまで来て落ちたら大変だ」という気持ちに、さらに親の喜ぶ様子がプレッシャーとしてのしかかってきました。まあ、今となっては、かわいいプレッシャーでしたが。

3 そして、民法の口述がものすごいインパクトでした。

  いきなり飛んできた質問に面食らいました。なんと分野が「地上権、地役権」。私の知る限り、それまで論文、口述では出たことがないはずで、択一ですら超マイナー分野扱いでした。

  択一の時に申し訳程度に勉強した断片的な知識を必死にかき集めて何とか回答を積み重ねると、最後の大ボス質問が出てきました。

 「あなたは承役地の所有者です。隣接する要役地の所有者が、太陽光発電パネルを設置しました。太陽光パネル設置の地役権の時効取得について、承役地の所有者であるあなたが、時効を中断するには、どのような方法が考えられますか。」

  明らかに、自分で考えるしかない問題です。明確に中断するなら、承役地に建物でも建てて、太陽光パネルの利用を自由にさせなければ良い。ただ、時効中断のために建物まで建てなければならないのは明らかに過大な負担でおかしい。よし、ここは、、、、

 「通知で足りると考えます。つまり、あなたは今そのように太陽光パネルを設置して使っているけれども、私はそれを受け入れたわけではない、という通知をすれば良いと考えます。」

  面接官はお互いに顔を見合わせてから、、、「まあ、そのくらいでしょうかね。」

  何とか終了です。とはいえ、途中で「地役権は時効取得できない」と口走ってしまい、面接官から促されて慌てて訂正したり、地役権の条文をほとんど読んだことがないのがばれたり、かなり傷だらけになりました。

  ほかの科目の口述の内容なんてさっぱり覚えていませんが、この民法の口述だけは、あまりのインパクトで、未だに記憶に残っています。

4 とはいえ、実際は、最後の大ボス質問に辿り着いた時点で、とりあえず及第点だったのだろうと思います。大ボス質問は、自分の頭で考える力を見る、という観点の出題でしょうし、キレイに回答したら加点、くらいの話だったでしょう。

5 口述試験は、落とすための試験ではありません。面接官も、それなりに助け舟を出してくれます。なので、面接官の助け舟に頼りながら、何とか最後の大ボス質問に辿り着く、というのが目標でしょう。

  ここで意外なのですが、実は、後に裁判官に任官するような優秀な人材の中に、実は1回口述に落ちたことがある、という人を、少なからず見たことがあります。裁判官に任官するには、修習生の中でも上位の成績でないと、教官からチャレンジすら断られてしまいます。裁判官任官者でなくとも、優秀な修習生で口述1回落ちの経験者はそれなりにいました。

  これは想像なのですが、おそらく、彼ら彼女らは、優秀であるだけに、質問に対して完全な答えを出そうとして、一生懸命「頭の中で」考えてしまったのだろうと思います。

  一方、私のような者は、よくわからない時は、「はい、これは、、、、こういうことですから、、、ええと、、、これこれ、、、は違ったかな、、、」などと「口に出して」考えます。これなら、面接官にも、私がどこまで分かってて、どこから分かってないのかが伝わり、助け舟を出しやすいのです。

 「頭の中で」考えてしまうと、どこまで分かってるのか面接官に伝わらない。面接官も、どこに助け舟を出したらいいか分からない。結局、考える時間が長すぎて、時間内に大ボス質問に辿り着かず、落第点、というパターンだったんだろうな、と想像しています。本人達にそんなこと聞けないので想像ではありますが、あんなに優秀な人達が、9割以上合格する口述に落ちる理由なんて、それ以外にちょっと考えられません。

6 なので、口述のポイントは、「口に出して」考える、ということです。面接官に助けてもらいましょう。