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そんなブログ沢山ありそうですが…

憲法その4(令和3年答案構成)

1 「統治はチョロい」とまで書いた以上、どうチョロいのか、お見せすべきですよね。

  ということで、この問題をやってみましょう。

  「第1問 国会が国の唯一の立法機関とされることの意味について論ぜよ。

   第2問 以下の事項について条例で定めることの可否について論ぜよ。

       ①  罰則

       ② 法律の規制する事項と同一事項についての規制」

  どこかでみたような問題ですね。

2 これまでも触れましたが、いくつか注意点がありますね。「知らない問題のように解く。」「ふもとから3合目まで登るイメージで、簡単なことから書いていく。」など。特に、全部で1時間しかありません。構成を15分考えて、45分で全部書き上げるとなると、一つ一つについては、本当に基本的なことをちょびっとずつしか書けません。それでいいんです。

3 まず、全体として、どんな雰囲気のことを答えるか、というイメージをもちます。第1問が立法権について、第2問が条例についてです。ということは、「第1問が三権分立の中で、国会が唯一の立法機関として立法権を付与された意味」「第2問が、国会の立法権地方自治体の条例制定権の関係、第1問で検討した国会が『唯一の』立法機関なのに、どうして地方自治体がそれに反するように条例制定権を与えられているのか」みたいなことを答えるんだろうな、と思い浮かべます。

  第1問に「唯一の」とかわざわざ書いてくれているのが、出題者の優しさを感じさせますね。「地方自治体が条例を作ったら、国会が唯一じゃないじゃないか!」というツッコミを入れるところですよ、と教えてくれています。

4 で、第1問の答案構成ですが。

 ア 憲法は、三権分立の原則を採用している。(国会、内閣、裁判所の権限の条文なんか引用しますね。)

  イ 三権分立の原則は、国家権力を分立させ、相互に抑制させることで国家権力の暴走や行き過ぎを予防し、主権者である国民(1条)がその権力を代表者を通じて行使し、その福利を享受することができるようにする機能を有する。(最後の部分は、試験用六法の憲法前文に書いてあるのを参照すれば、暗記の必要なんかないですね。リンカーンの「人民の人民による人民のための政治」と同じ意味です)

 ウ そして、憲法は、国会を、選挙によって選ばれた議員により構成することとし(43条)、唯一の立法機関と定めている(41条)。これは、立法権を国会にのみ与え、かつ国会を国民の選挙により選ばれた代表者で構成することで、立法権の行使に対する国民のコントロールを強力に担保するためである。(我ながら表現力が乏しいところです。書いてある内容は、条文をつなぎ合わせて、「国民主権を守るため!」と大きな声ではっきり言ってるだけですね。)(ここで、余裕があるなら、41条が国会を「国権の最高機関」と定めている点にもふれたりして、ちょこっと加点をもらったりするところでしょう。)

 …もうこんなもんで第1問はタイムオーバーじゃないですかね。

5 で、第2問の答案構成です。

  まず、なんとなく、「地方自治とは」と総論的なことを書いた方が良さそうですね。

  92条に「地方自治の本旨」とか書いてありますね。これについて、書けば良さそうです。「法律で定める」とあるのですから、法律を見ましょう。

  地方自治法も試験用六法に載ってますよね。

  ほらあった。地方自治法1条の2には「地方自治体は、、、住民の福祉、、、地域における行政を自主的かつ総合的に担う、、」(一項)とあります。これが地方自治の本旨っぽいですね。

  ご丁寧に、二項には、国と地方自治体の役割の分担のあり方が細かく書いてありますね。覚える必要は全くありませんね。

 総論として、

 ア 地方公共団体は、その長や議会の議員を住民が選挙するものと憲法が定めている(92、93条。条文のままですね)。

 イ そして、地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本とし、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものと定められている(地方自治法1条の2第一項。これも条文のまんまですね。)。

 ウ また、国と地方公共団体の役割は、全国的に統一して定めることが望ましい事項などを国が、住民に身近な行政などは地方公共団体が担うべきものとされている(地方自治法1条の2第二項。長いので、ちょっと要約しました。)。

 これで、地方自治とは、という総論っぽいものの完成です。条文そのまんまですが。

6 で、小問の答案構成ですね。

 ア 条例制定権については、94条が「法律の範囲内で」これを地方公共団体に認めている。「法律の範囲内」に限定することで、国会を「唯一の立法機関」と定めたこととの調和を図っている(当たり前ですね)。

 イ 罰則については、地方自治法14条3項が、条例に違反したものに対し、「二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、、、」などと、上限を限定して、罰則を定めることができるとしている。これは、条例で定めることができる罰則を、比較的軽い内容にとどめることで、条例が法律を超えた罰則を作ることがないよう、歯止めをかけるものである(当たり前ですよね)。

 ウ 法律で規制するのと同じ事項について、条例で規制する場合には、それが「法律の範囲内」にとどまると言えるのかが問題となる。そもそも、条例で定める事項は、地域特有の事情に応じた、住民に身近な事項に関するものが中心のはずである。法律で規制がある事項については、法律が全国一律であるべきとして定めた規制については、これと異なる条例の規制を定めることは許されない。逆に法律の規制が、地域の特徴に応じて異なる取り扱いを許容する趣旨である場合には、地域特有の事情を勘案した上で、これと異なる条例の規制を定めることも可能と解される。(このウは、論点的な勉強の成果を発揮すべきところですね)。

6 まあ、1時間だとこのくらいでしょう。罰則については、もうちょっと書き足したいところですが。

  ありがちなパターンとして、第2問の①②を勉強したことがあるもんで、そこばかり手厚く書こうとしてしまい、第1問や第2問の「地方自治とは」みたいなところがショボかったり、ほとんど書いてない、というのがあります。

  統治で聞かれるのは、第1問の部分です。第2問の「地方自治とは」の部分も、権力分立の理解を問われるところです。私の感覚では、「地方自治とは」の部分まで採点官が読んだら、もうほとんど合格点をつけるかどうかは決まってしまいます。そこが、「統治を理解しているか否か」という差がつく部分だからです。

  ①②なんて応用の問題だし、応用の部分だけ一生懸命書いても、三権分立の基本的な部分が分かっているのかどうか、伝えることができない。さらに、①②なんて、ある程度勉強した人だと、みんなある程度書けて差がつかないんですよね。

  とはいえ、三権分立にせよ、地方自治にせよ、別に暗記なんかしなくたって、全部条文に書いてあることを、中学生の公民レベルの意識でつなぎ合わせれば、書けてしまうのです。結局、全てが「三権分立」のキーワードに集約するので、統治は「チョロい」のです。

  これが、「ふもとから3合目までをゆっくりしっかり登れることを示す。」ということです。

7 思いの外長くなりましたが。以上です!