副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

ご遺族への対応

1 検察官の仕事の中でも難しい仕事に、犯罪被害で亡くなられた方のご遺族への対応があるそうです。ご家族を亡くされた心痛を抱えているご遺族への対応は、相手の気持ちに寄り添い、かつ法律のプロとして、その後の見通し等を適切にお伝えしなければなりません。

2 特に、副検事の方は、交通事故で亡くなられた方のご遺族への対応をすることがあります。交通事故のご遺族というのは、ご遺族の中でも、特に心の傷が深いことが多いそうです。というのは、交通事故というのは、基本的になんの予兆もありません。事故が起きる直前まで、被害者の方もご遺族も、日常の平穏な生活を送っていたのです。それが、いきなり交通事故に巻き込まれ、被害者が亡くなり、ご遺族は突然悲しみの淵に投げ込まれてしまうのです。しかも、交通事故の原因は、多くは単純な過失によるもので「よく見てなかった」「ボーッとしてた」など、およそ家族が亡くなった理由としてご遺族が受け入れられるものではありません。交通三悪(無免許、酒気帯び、信号無視)や不救護不申告(いわゆるひき逃げ)が絡んだら、当然ご遺族の怒りは更に高まります。このようなご遺族の置かれた状況を思うと、簡単に「お気持ちはわかります」などと言えるものではありません。このようなご遺族の気持ちに寄り添うためには、人間として少しずつ心を鍛えていくしか、道はないと思います。

3 また、交通事故について、ご遺族の期待するような刑事処分ができないこともあります。不救護について、犯意(人を事故に巻き込んだ認識等)が立証できない場合や、事故について過失が問えない場合など、該当部分については不起訴にせざるを得ない場合もあります。このような場合、ご遺族の怒りは間違いなく検察官に向かいます。これは、もう正面から怒りを受け止めるしかないそうです。他にご遺族が怒りをぶつける先がないのですから。本来怒りをぶつける先であるはずの被疑者を、不起訴にすると検察官が言っているのですから。正面からご遺族の怒りを受け止めると、何日かはメンタルが不安定になるそうです。それでも、受け止めるより他にないのです。

  なお、このレベルのご遺族への対応になると、通常は検事に任せるか、副検事ならかなりベテランの方が担当することが多いと思います。任官したての副検事が、いきなりこのようなご遺族への対応を担当することはないでしょう。しかし、いずれは、このような難しい業務も担当できるようになる必要があります。副検事に任官した際には、このような業務に備えて、心を鍛えることも忘れないでください。