副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

民法その4(令和3年答案構成)

1 答案構成、やってみますか。

  全く自信ありませんが。

  令和3年の副検事試験問題です。

「Aは、夫であるBの収入が減ったことから、不動産売却による収入を家計に補填する目的で、Bに無断で、Bから預かっていたBの実印等を利用し、Bの代理人としてB所有の土地をCに売り渡した。

第1問

① Cは、Bに対し、どのような請求をすることができるか。

② Cは、Aに対し、どのような請求をすることができるか。

  また、予想されるAの反論及び同反論に対するCの再反論としては、どのようなものが考えられるか。

第2問

 Cが請求しないでいる間にBが死亡した場合、CはAに対し、どのような請求をすることができるか。なお、BにはA以外に相続人がいなかったものとする。

 逆に、Aが死亡してBがAの唯一の相続人であった場合、CはBに対し、どのような請求をすることができるか。」

  うーん、長い!これ1時間で書くんですよね。

  そして、民法の問題を解くのは、20数年ぶりでしょうか、、、、。正直なところ、民法は、ちゃんと勉強されている読者の方が、断然私よりできると思います。ただ、「不勉強な状態で、法律の原理原則を駆使してどこまで足掻けるか」というコンセプトで、恥を忍んでやってみます。

  いつもの通り「知らない問題のつもりで解く」「麓から3合目までを登るように。」「問題の所在の指摘を詳しく」です。

2 まずは、問題の全体的なイメージから。

  第1問は、無権代理と日常家事代理について、本人と代理人の責任を問う問題のようです。不動産売却だから、普通は日常家事にはならないでしょうね。

  第2問は、相続によって、本人と代理人の立場が並存した場合の取り扱いです。こういうの、ありましたね。初めて見た時には、「そんなしょうもないことを、よく考えるな。」と思ったものです。ただ、今では、こういう極端な事例を考えることで、ことの本質の理解が深まるものだ、ということを、勉強を通じて知っているので、「しょうもない」とまでは思いません。本人死亡と代理人死亡の対比がありますね。おそらく、生き残ったのが本人ならば保護に重点を、代理人が生き残ったら責任に重点を、ということでしょう。

3 では答案構成いきましょう。条文も久々に見ます。

  まずは、土台の部分です。

  「Aは、Bの代理人として、B所有の土地をCに売り渡している。しかし、実際は、AはBに無断でこれを行なっているので、Aは本人であるBから代理権の授与を受けていない。従って、AがCに不動産を売り渡した行為は、無権代理(民法113条)である。」

と、これがスタートでしょうね。よくないパターンは、いきなり「日常家事代理の成否が問題となる。」とやってしまうことです。原理原則からスタートするという基本的な姿勢を示せない上、日常家事代理から描き始めると、無権代理に関する事項がすごく書きづらくなりますね。

  「①について

  では、相手方Cは、本人Bにいかなる請求を成しうるか。まず、Cは、Bに対して、Aの無権代理行為を追認するか否か、期限を定めて催告することができる(民法114条)。Bが追認すれば、CはAとの契約通り、不動産を購入できる。

  Bが拒絶した場合、CはBに対して、不動産売買契約の成立を一切主張できないであろうか。本問では、BはAに対して何らかの代理権を授与したり、代理権授与表示を行った事実はない。BがAに実印を預けていた事実のみから代理権授与表示があったとも認め難い。従って、表見代理(民法109,110,112条)の成立も、CはBに主張し得ない。では、Cは、Aの行為が日常家事代理(民法761条)であるとして、その効果がBに帰属することを主張できるであろうか。Aの行為が「日常の家事に関して」行われたものかが問題となる。」

と、ようやく日常家事代理の出番です。間に表見代理かましたのは、「原理原則から検討している」姿勢を示すためです。実印を預けている点は、代理権授与表示ではないか、深く検討することもできそうです。しかし、本問は、他にも書くことが多いので、実印を預けていた点を代理権授与表示と見るかは、出題意図ではないだろうと予想できます。こういうところは、気づいていても無視して良いと思います。

  日常家事代理は、一応趣旨に言及しておきましょうか。

  「民法761条は、夫婦の一方が日常の家事に関して第三者とした行為について、もう一方もその債務に連帯責任を負うとしている。これは、夫婦が共同生活を送る上で行う種々の法律行為について、代理権授与の有無を問わずに連帯責任を課すものである。その効果が強力である点に照らしても、「日常の家事」に関するか、については、社会通念に照らし、限定的に解されるべきである。」

、、、、うーん、うまく書けませんね。趣旨に言及しようと思ったのですが、趣旨を書けていない。みなさんは勉強して書けるようになって下さい。

  当てはめです。

  「本問では、AはCに不動産を売り渡している。Aが、家計を補填する目的であった点からは、AとBの共同生活のために行った行為のようにも見える。しかし、不動産売買は、通常その金額も高額であるし、家計補填のために不動産を売却することが社会通念上一般的とも言い難い。このようなAの行為について、日常の家事に関する行為であるとしてBに連帯債務を負わせることは、Bにとってあまりに酷である。Cは、Bに日常家事代理としての連帯債務責任を追求して債務履行を求めることはできない。」

で、どうでしょう。結構長くなってしまいました。

4 ②です。ここは、条文の説明でしょう。

  「②について

  CはAにいかなる請求をなし得るか。Bが追認するまでの間は、CはAとの契約を取り消すことができる(民法115条)。また、Bが追認しない場合、CはAに対して、履行又は損害賠償の請求をなし得る(民法117条1項)。ただし、Cが契約当時、Aが代理権を有しないことを知っていた場合には、CはAに履行や損害賠償を請求することはできない(民法117条2項1号)。」

と、こんなもんでしょうか。

  ととと、Aの反論、Cの再反論を忘れてました。何書くんだろ?117条2項くらいしか思いつきません。

  「なお、Aは、Aの無権代理を知らなかったことにつき、Cに過失があることを主張、立証することにより、履行や損害賠償の責任を免れる。ただし、その場合であっても、Cが、Aの無権代理をA自身が知っていたことを主張、立証することにより、Aに履行、損害賠償を請求できるようになる。」

  条文そのまんまですね。なんか、出題意図を外している予感もしますが、分からないんだから仕方がありません。

5 では第2問です。

  自白しますが、勉強していないので、どういう結論が正しいとされているのか、すっかり忘れています。適当に書いてみます。

  「第2問は、無権代理人と本人の立場が同一に帰した場合である。まず、Bが死亡し、Aが単独で相続した場合を検討する。この場合でも、Cは本人となったAに追認をするか否かを請求できる。仮にAが追認を拒絶しても、Cは無権代理人であるAに対して、契約の履行を請求できる。この場合、Aは単独相続により、不動産の所有権を取得しているから、Cから履行を求められた場合には、これを拒絶することはできない。ただし、無権代理行為を行ったAは、そもそも不動産の所有権をCに移転するために尽力すべき立場にある。そのようなAについて、本人として追認拒絶を認めるのは、Aの矛盾した行為を許容することとなりかねない。そこで、この場合には、Aには、信義則違反、権利濫用(民法1条2項、3項)として、追認拒絶をそもそも認めないべきである。一方、Cには、取消権、損害賠償請求権の行使を選択的に認めるべきである。」

てなもんでしょうか。追認拒絶を認めても、履行を請求できるので、あんまり結論変わらない気もしますが。

  そして、逆パターンです。

  「一方、Aが死亡し、Bが単独相続した場合はどうであろうか。この場合もCはBに追認を請求できる。ただし、Bは、本来自分の預かり知らないところでAに不動産を売却された立場であることから、Bには追認拒絶を認めるべきである。この場合、Cは、無権代理人の立場を相続したBに、損害賠償を請求できるし、取消権を行使することもできる。また、条文上は、Cは無権代理人の立場を相続したBに対して履行も請求できることとされている。しかし、本来保護されるべき立場であった、無権代理の本人であるBについて、偶々相続により無権代理人の立場が並存することになったことで、不動産売却の履行についてまで責任を負わせるのは酷である。Cの履行の請求については、「権利の濫用」(民法1条3項)としてその請求を制限し、損害賠償請求のみを認めて金銭的な解決を図るべきであると解する。なお、Bが不動産売却の履行を希望する場合には、Cの履行請求を制限する必要はなくなる。」

とかですかね。別に、相続したんだからBに履行義務を認めてもいいと思うのですが。答案の見栄え上、こんな風の方が格好いいかな、と思いまして。

6 後で、研修誌の解説っぽいやつと見比べてみましょう。自分としては、そこそこ普通には書けたかな、と思うのですが。もしかしたら、赤っ恥ものを書いてしまったかもしれません。

  でもしょうがないですよね。書いちゃったんだし。長くなりました。以上です