副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

憲法その3

1 憲法の残りは統治ですね。

  実は、この統治という分野こそ、何を求められているか、が分かってしまえば簡単なのです。

  別に、統治という分野自体が簡単だと言っている訳ではないですよ。

  ただ、こと論文試験というアウトプットに限定すると、聞かれていることが、極めてワンパターンなのです。

2 キーワードは「権力分立」です。一応、地方自治などにも配慮して、この言葉を使いましたが、ほぼ「三権分立」と言って良いです。

  大昔は、国家権力というのは、王様や殿様が一手に握っていた訳ですよね。

  大日本帝国憲法の第一条は、有名ですが、「大日本帝国万世一系天皇之を統治す」とありますね(原文は漢字カナ混じりです)。その後、権力を分散させるかのような規定もありますが、「天皇神聖にして侵すべからず」(3条)とありますから、天皇の権力を制限するものとは読みづらく、そこに権力分立の発想は見出し難い。

  一方、今の憲法の統治規定は、明らかの権力を分立させ、相互抑制をさせることを意図しています。国家権力の源泉を国民主権に置く一方、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」(前文)と、間接民主主義を原則とすることで、全ての国家権力をまとめて行使できる者が存在しないようにしています。こうして、権力の分立、相互抑制を機能させています。

  そして、憲法統治の論文問題というのは、統治のどの部分に焦点を当てているにせよ、その制度の意義に関して、「なぜ」「なんのために」「どうやって」を聞いているだけなのです。そして、その答えは常に「権力は腐敗するものであって、暴走する危険があるので」「権力行使を適正なものにするために」「権力を分立させて相互抑制させて」と決まっているのです。これが、ワンパターンで簡単、の意味です。

  逆にいうと、出された統治の問題について、どの部分を書けばこの型にうまくハマるかな、とだけ考えれば、答案に書くことはほぼ見えてしまいます。

3 もちろん、統治機構についても、ちゃんと一通り勉強はすべきです。ただ、一方で、「そこまで根を詰めなくても、ある程度の常識で、何となく答案が書けちゃう」というのも、統治に関しては真実です。

4 一つ実例をあげてみましょう。

  私が実際に答練で見た問題の中で、最も手も足も出なかったのが、「衆参同日選挙の憲法上の問題点を論ぜよ。」という趣旨の一行問題でした。何が問題になるのかが皆目分からず、撃沈した問題です。

  ただ、これも、「結局権力分立」と考えれば、「衆議院参議院があるのは、権力を分立させるため」であり、同日選挙とは、政権が大勝を見込んだ際にとる戦術であることを考えると、「同じ日に選挙をしたら、同じ意見が反映されて、権力分立の意味がなくなっちゃうんじゃない?」という問題点が浮かび上がってきます。

  こうなれば、後は、選挙手続や任期の違い、参院が半数改選であること等の違いを指摘した上で、「だから合憲」「それでも違憲」と自分の意見を書けば、いっちょあがりですね。結論は、正直どっちでもいい。ここまで問題の所在が指摘できていれば、文句をつけられるわけがありません。

  この「衆参同日選挙」の問題は、「問題点を知ってると簡単に書ける」「問題点を知らないと難しい」という向きもあり、出題としては、あまり良い問題とは思いません。ただ、「知らなくても書ける」例としては、適当な例だと思います。まあ、本当にこの問題知らないで書けたら、統治に関しては司法試験合格レベルと思いますけど。

5 信じられない人は、統治の過去問だけまとめて何問かトライしてみて下さい。一通りの勉強が終わっている人にとっては、実は統治は「チョロい」科目だと分かるはずです。

6(後日追記)

  ただし、副検事試験では、統治ではあまり権力分立の部分は問われないようです。しっかり勉強しないと。ワンパターンでは いけないようです。