こちらも、最後に感想を一言入れておきます。
甲が覚せい剤の密売をしているとの情報を得た警察官は、甲の行動確認のため、令和7年5月13日午後10時から、X市内路上を徒歩で移動する甲を尾行していたところ、甲が路上ですれ違ったVの肩がぶつかったことに因縁をつけ、無抵抗のVに対して一方的に殴るけるの暴行を加えた(以下、本件暴行事件という)のを現認した。 そのため、警察官は、甲を静止して暴行罪の現行犯人として逮捕した。甲は、抵抗することなく逮捕に応じたが、自身の上着のポケット部分をしきりに気にする素振りを見せたため、警察官が、その場で同ポケット内の所持品を確認した。 これに対しても甲は特段の抵抗はせず、警察官は、同ポケット内に「R7.5.13 PM800 乙にシャブ0.5グラムを10万円で売却」の手書きで記載されたメモ紙(以下、「本件メモ紙」という)が入っているのを発見したため、これを差し押さえた。 警察官は、同月14日、本件メモ紙を疎明資料として乙方の捜索差押許可状の発付を請求し、同許可状の発付を受けた。そして同日、乙が所在不明であったため、乙と同居する乙の母親を立会人として乙方の捜索差押を実施し、「5/13 0.5グラム」と手書きで記載された封筒と同封筒に入っていたパケ入覚せい剤(重量0.5グラム)(以下、本件覚せい剤という)を発見し、これらを差し押さえた。 その後の捜査で、同封筒の表面から甲及び乙の指紋が検出された。 同月23日、検察官は、甲を本件暴行事件で公判請求し、警察官は、「令和7年5月13日頃に乙に覚せい剤を譲り渡した」旨の被疑事実(以下、本件覚せい剤譲渡事件という)で、甲を通常逮捕した。 その後の本件覚せい剤譲渡事件の捜査において、甲は一切の供述を拒んだが、検察官は、令和7年6月12日、甲を本件覚せい剤譲渡事件で公判請求した。 なお、乙の所在はその後も判明していない。 甲は公判段階において、本件暴行事件は認めたものの、本件覚せい剤譲渡事件は否認した。 検察官が、本件メモ紙の立証趣旨を「甲が令和7年5月13日午後8時ころに乙に覚せい剤約0.5グラムを10万円で譲り渡したこと」として、本件覚せい剤の立証趣旨を「覚せい剤の存在及び形状」として、それぞれ証拠調べ請求したのに対して、甲の弁護人は、不同意または証拠調べに意義があるとの意見を述べた。 問 本件メモ紙及び本件覚せい剤の証拠能力について、それぞれ論じなさい。 なお、本件メモ紙が甲作成のものであることは、証拠上、認定できるものとする。
いやいや、また随分実務的な問題ですね。ツッコミどころは多いのですが。そんな簡単に封筒から2人分の指紋なんか出てくれたら、楽ちんですね。封筒やメモにいちいち分かりやすいメモ書きなんてあったら、かえって疑っちゃいますよね。覚醒剤0.5gで10万円なんて、そんな高値で誰が買うんだろう?
メモについては、押収手続(暴行の現行犯逮捕に伴う身体の捜索は可能だが、暴行事件と全然関係のないメモを現行犯逮捕に伴う差し押さえで対応して良いのか)、立証趣旨を譲渡行為の存在としているが、メモから直接立証できる事実は、「甲がコレコレの内容のメモを作成し、所持していたこと」ではないか、というくらいでしょうか。
覚醒剤については、メモの押収手続に違法があったことを前提として、同メモを疎明資料として取得した乙方の捜索・差押許可状によって押収した本件覚醒剤が、違法収集証拠として排除されないか、という問題でしょうか。
あとは、捻り出すとすれば、乙不在で乙母立会の捜索の適否とか?そんな細かいこと論じてもしょうもないと思いますが。
本件覚醒剤というのが、もし、封筒まで含んでいるのであれば、立証趣旨は覚醒剤の性状のみならず、封筒のメモ内容とか指紋に広げるとかですか?でも普通は封筒は別の証拠物にするし、指紋は別途鑑定書を出しますよね。
こんな風に、この問題は、「長いんだけど、パッと見、論じるべき内容があまり見えず、出題意図が掴みづらい問題」と感じました。さて、正解はなんだったんでしょうね。