1 令和6年の副検事試験について、情報提供をいただきました。
ありがとうございます!
【民法】 Aは、平成24年1月、Bに2000万円を貸し付け、同時に、その担保として、Bの知人であるCが所有する甲建物に抵当権を設定し、その旨登記した。その後、Bからの返済を受けることがないまま、弁済期(同年7月)から5年が経過したため、AのBに対する債権の時効が完成した。
以上の事実を前提に、次の問いに答えよ。なお、以下の問1~3はそれぞれ独立した設備である。
間1 Bは、平成30年10月、Aから貸付金の支払を求められたため、1000万円を支払ったが、その後、時効完成に気付いたため、残額については支払をせず放置した。同年11月、Cは、Aから前記債権の残額を支払うように求められたが、支払いたくないと思い、Cが支払う必要がないことを主張しようと している。Cは、かかる主張の一つとして、Aに対して、AのBに対する債権が時効により消滅したと主張することができるか。
問2 Cは、平成30年10月、Aから、AのBに対する貸付金の支払を求められたため全額を支払った。CのAに対する支払は、法律上認められるか。これが認められる場合、Cは、Bに対して求償することができるか。
間3 Dは、平成28年4月、 Bに1500万円を貸し付け、同時に、 同債権の担保として、甲建物に抵当権を設定し、その旨登記した。 平成30年10月、 Aは、Bから貸付金の返済がないことから、甲建物に設定した抵当権を実行しようとした。これを受けて、Dは、AのBに対する債権は時効により消滅したため、Aの甲建物に対する抵当権を実行することはできないと主張した。かかるDの主張は、認められるか。
【刑法】 甲は、消費者金融からの借金を重ねた上その返済を滞らせ、 金融機関等から融資を受けることがもはやできなくなっていた。 また、甲は、住居侵入・窃盗罪で逮捕され、有罪判決を受けて服役したが、その逮捕の際には、インターネット媒体を含め報道機関により逮捕の事実が広く実名で報道されていた。さらに、甲は、自動車運転免許を保有していたものの、服役中にその有効期限を迎え、出所後もその更新手続をとらなかったため、無免許の状態になっていた。
以上の事実関係を前提に、以下の各問における甲の罪責を論ぜよ。なお、各問は独立したものとする。
問1 甲は、A名義の自動車運転免許証 (発行者であるB県公安委員会の記名、公印があるもの)を拾ったことから、これを使って消費者金融から借入れしようと考えた。そこで、甲は、同自動車転免許証の写真部分に自己の写真を重ねた上で電子複写機によって複写した自動車運転免許証の写真コピーを作成した上で、消費者金融C社に電話をしてAを名乗って30万円の借入れを申し込んだ。甲は、C社の担当者から借入申込書及び身分証明書の写しの送付を求められたことから、Aの名前を申込者として記載した上Aの名字が刻印された印を押して借入申込書を作成し、同借入申込書と前記自動車転免許証のコピーをまとめてC社に郵送した。 C社の担当者は、同借入申込書等を受領した。
なお、A名義の自動車運転免許証の入手及び詐欺ないし詐欺未遂に係る罪については、論じる必要はない。
問2 甲は、自身が逮捕された過去がインターネット検索で容易に調べ得る状況であったため、自分の本名では希望する会社に就職ができないと思い、 偽名を用いてD社に就職しようと考えた。 そこで、 甲は、履歴書用紙を用意し、その氏名欄に偽名であるEと記載したほか、生年月日欄、住所欄、経歴欄についても虚偽の内容を記載した上で、 同用紙に甲自身の写真を貼付するとともにEの名字が刻印された印を押して、履歴書を作成した。 さらに、 甲は、採用面接のためにD社を訪れた際、同履歴書をD社の採用面接担当者に提出した。 甲は、採用面接に合格した際には、 D社にEの名で就職するつもりであった。
問3 甲は、生活のためには無免許でも自動車を運転する必要があると考え、そのことを親友であるFに相談した。 すると、甲は、Fから「免許がないと困るだろう。 仮に軽い交通違反が見つかったときくらいなら、俺の名前を使ってもらって構わない。 俺は、お前のために、多少の減点くらい受け入れる。」などと言われた。 甲は、Fの生年月日や住所などを暗記していつでも答えられるようにした上で無免許運転を繰り返していたが、普通乗用自動車を運転中、一時停止違反をしたところを警察官に現認された。 甲は、その取締りに当たった警察官に対し、Fを名乗った上、「免許証は自宅に忘れてきました。」などと述べた。その上で、 甲は、警察官に対して一時停止違反の事実を認め、一時停止違反及び免許不携帯についての交通事件原票の捜査報告書欄の下方にあり、「私が上記違反をしたことは相違ありません。」などと記載された供 述書(甲)の氏名欄にFと署名するとともに自己の指印を押し、これを警察官に提出した。
なお、道路交通法違反に係る罪責については、論じる必要はない。
【刑事訴訟法】 令和6年5月15日午後11時頃、O市N町内所在のV方において、Vが胸部をナイフで複数回刺されて殺害される事件(以下「本件殺人事件」という。)が発生した。
同月20日、警察官官は、本件殺人事件の犯人として甲を通常逮捕するとともに、甲の使用するスマートフォンを差し押さえた。
同スマートフォンには、同月10日午後5時に甲のメールアドレスから乙のメールアドレス宛てに送信された 「Vを見付けた。 ○市N町内に住んでいる。」とのメッセージのデータが残っており、 警察官は、①同メールを撮影した写真を添付した写真撮影報告書を作成した。
さらに、同スマートフォンには同月13日午後2時に保存された 「乙からの指示 量産品のナイフを使用し、 実行後は海に投棄すること」 とのメモのデータが残っており、警察官は、②同メモを撮影した写真を添付した写真撮影報告書を作成した。
甲は、捜査段階において、当初、「乙から、Vを探し出して殺せば、500万円支払うと言われ、Vを殺害した。」 旨供述したが、供述調書の作成を拒否し、その後、黙秘に転じた。
検察官は同年6月10日に甲を本件殺人事件で公判請求したが、その後、 甲は、拘置所内で脳出血を起こして記憶喪失となり、回復の見込みは低いと診断された。
警察官は、同年5月25日、乙を本件殺人事件の共犯として逮捕し、乙が一人暮らしをするマンションの室内で 「5/5 Vは絶対に殺す。 甲に実行を依頼した。」と記載された③メモ紙を差し押さえた。
乙は捜査段階において、一貫して本件殺人事件への関与を否認する供述をしたが、検察官は、 同年6月15日、 乙を本件殺人事件で公判請求した。
なお、甲についての審理と乙についての審理は併合されていない。
乙は公判段階においても本件殺人事件への関与を否認し、検察官が
①の写真撮影報告書について、立証趣旨を「甲から乙宛てのVの所在を伝えたメールの存在」として
②の写真撮影報告書について、立証趣旨を 「乙が甲にVの殺害方法等を指示したこと」として
③のメモ紙について、立証趣旨を「乙がVを殺害する意図を有し、甲にVの殺害を指示したこと」として
それぞれ証拠調べ請求をしたのに対し、乙の弁護人は、不同意又は証拠調べに異議があるとの意見を述べた。
問 伝聞法則及び伝開証拠について説明した上で、検察官として、 弁護人の前記意見を受けて、所期の立証を行うため、前記①及び②の写真撮影報告書並びに③のメモ紙について、それぞれどのような対応をすべきかについて論じなさい。
なお、①のメール及び②のメモが甲作成のものであり、③のメモ紙が乙作成のものであることは、証拠上認定できるものとする。
【検察庁法】 検察官・検察庁の行う事務に対する法務大臣による指揮監督の在り方につき、それぞれ事務の内容を具体的に指摘しながら、その性質による場合分けをしつつ論ぜよ。
なお、論ずる際には、行政権と司法権の差異を踏まえながら、関係法令の規定に言及すること。
※ 配付の法文のほか、添付の条文を参照されたい。