副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

司法試験の合格点

1 副検事試験ではなく、司法試験の話ですが。「今の司法試験は、平均点より下でも合格する。」という都市伝説的な噂を聞きました。合格率が40%行かないようなイメージを持っていたので、「そんなことあるのか?」という疑問が湧きました。なので、確認してみましょう!

2 法務省のホームページに、司法試験関係のデータが色々載っています。これを参照しながら、確認したいと思います。

  令和5年の司法試験は、採点対象者(全科目受験した者)が3897人、合格者が1781人です。計算すると、合格割合は約45.7%ですね。イメージしていたより多いです。念のため、出願者の4165人と合格者の割合を計算しても、合格率は約42.8%でした。こうしてみると、年を経て段々と合格率が上がってきているのかもしれません。ただ、法科大学院の導入当時に言われていた合格率70〜80%という数字には遠く及びませんね。

  それでも、半分以上は不合格になる試験です。平均点より低くては、合格出来なさそうに感じます。

  また、気になる数字として「途中欠席31人」というのがありました。これは、試験を受け始めたけど、途中で(多分諦めて)帰った、ということですよね。結構な人数だと思います。長い時間かけて勉強して試験の準備をしてきたのに、途中で帰ってしまう気持ち、というのは、なかなか推しはかるのは難しそうです。

3 そして、点数関係ですが、どうやら司法試験は短答式と論文式の点数を合算して合否を判定するようですね。総合点が最高約1220点、最低約440点、平均約813点、だそうです。ところが、合格最低点が載っていません。代わりに点数分布が載っているので、ここから、合格者の人数である1781人を手がかりに見ていきましょう。

  1位が1220点、10位が1161点、100位が1056点、500位が956点、1000位が876点、1500位が804点、1781位が770点でした。なお「位」と書きましたが、正確には累計人数ですので、「当該点数以上を獲得した総人数」というのが正確なところです。

  ちなみに平均点である813点は、1443位になります。合格するだけなら、平均点で余裕合格です。

4 何でしょうかね、これ。ちゃんと分布図をグラフにしないと正確なところは分かりませんが、多分、グラフが偏っていて、中央値が平均点より結構低いところに来ているのでしょう。綺麗な正規分布なら、平均点と中央値はほぼ重なります。合格者の人数は全体の半分より少ないのですから、それにもかかわらず合格点が平均点より低い、というのは、平均点より高い領域で、狭い範囲に多くの人がひしめき、かつ、平均点より低い領域で、幅広く人が分布している、という状態が予想されます。、、、これあってますかね?要するに、とことんできない人たちが結構な人数いる、ということですね。

5 もうちょっと確認してみましょう。

  データには、受験資格も記載されています。ロースクール修了者が817人、ロースクール在学中が637人、予備試験が327人です。ロースクール在学中は、令和5年から始まった受験資格のようですが、かなりの人数が在学中に合格しています。また、受験回数についても、合格者中、1回目が1584人、2回目が123人、3回目が35人、4回目が24人、5回目が15人となっています。1回目の受験者の合格者専有率が88.9%と極めて高い数値が出ています。これを見ると、来年は、さらに在学中の合格者の人数が増えそうな感触です。

6 以上を総括すると、司法試験においては、1回目受験者が合格者の大半を占め、かつ高得点を取っていること、2回目以降受験者の多くが、平均点以下の幅広い範囲に分布していることが推測されます。

  ということは、平均点以下でも合格するから簡単だ、と決めつけることは難しそうです。むしろ、一回目で合格しないと、2回目以降の受験で合格を得るのが極めて厳しい現実があるようです。

  また、今は弁護士事務所に採用してもらうためには、司法試験の合格順位を情報開示で得て事務所に提供するのが普通のようです。そうすると、単に合格すれば良いのではなく、良い成績で合格する必要性が高まると思います。

  昔の司法試験は、何年かかかっても、合格さえしてしまえば順位なんてほぼ誰も気にしない(裁判官は例外です)状態でしたが、時代は変わったものです。