副検事になるための法律講座

そんなブログ沢山ありそうですが…

マッシュル

1 「マッシュル」という漫画があるそうです。アニメにもなって、主題歌がかなり流行っているそうで。

  この漫画を読んだ訳ではないのですが、設定を耳にする機会がありました。

  魔法の世界で、魔力が強いものが偉く、魔力がない(魔法が使えない)人間は、その血脈を断つために排除されるのだそうで。優生思想ギラギラで、とてもヨーロッパに持ち込めなさそうな設定です。

  そして、主人公男子は魔力がなく、排除の対象なのですが。類まれなる身体能力を活かして、生身の体(魔法なし)で、魔法学校に入り、トップを目指すのだそうです。

  例えば、「手を動かす衝撃波で、敵を魔法で倒したように見せる」「超高速で移動して、瞬間移動の魔法に見せる」「箒を投げ上げ、空気を掻いて空を飛んでいるように見せる」とか。

2 なかなか面白そうな設定に聞こえました。そして、これを聞いた時に、ある人から聞いた話を思い出しました。

  その人は、若い頃、先輩からこう言われたそうです。「検事は超能力が使えないと仕事にならない。」

  これは、検事に限らず、副検事、検取事務官も含めて、大なり小なりそういう面があるのだと思います。

3 もちろん、この「超能力」というのは、実際の超能力ではありません。

  事件のスジ読みの場面です。集まっている証拠や、法廷では立証できない情報を総合して、考えられる筋書きを複数頭に浮かべ、吟味するのです。そんな中で、「ここにこんなエピソードがあったのではないか?」など、それまで見えなかった部分について、仮説を立て、裏付け捜査をしていきます。被疑者、関係者に話を聞くのもアリです。

  聞かれた方からすると、「何でそんなこと知ってんの?」となることもあります。まるで、検察官が透視能力でもあるかのように見えるようです。

  ただ、実際は、生身の体で、膨大な証拠や情報を頭の中に入れ、洞察力、推理力を駆使してスジを読み、真相、実態を見極めているだけです。超能力でも何でもありません。ただ、人間が通常持ち合わせている能力を、通常あり得ないレベルで活用しているのです。

  ほかに、被疑者取調べの場面があります。被疑者がおかしな供述をしている時に、検察官はその原因、理由を十分理解した上で、被疑者を取調べ、その心を解きほぐします。その結果、自分の悪事をきちんと話すようになる被疑者もいます。それは、はたから見ると、「被疑者の心を直接読み取っている」ようにも見えます。ただ、実際は、被疑者の人生のバックボーンや性格等を踏まえた洞察によるものです。やはり、生身の体でなされたもので、超能力でも何でもありません。

4 ただ、こういう高い洞察力、推理力がないと、検察官が仕事にならない、というのは、確かにありそうです。それは、捜査の際に集まった証拠や情報は、それだけでは不十分なことが多いからです。もっと証拠を見つけないと、事案の真相が見えません。ただ、闇雲に証拠を探すのは、手間が膨大で効率も悪いです。「ここにこんな証拠がありそうだ」という見当をつけることで、手間を省き効率を上げる必要があります。また、被疑者が犯人であれば、事件の真相を最もよく知っているはずです。その被疑者に真相を話してもらうのは、大変効率的なことです。

  そして、検察官としての洞察力、推理力が高ければ高いほど、事件をより解明する力が高い、という関係になります。これが一定レベルを超えると「超能力」になるのでしょう。

5 「生身の体で魔法のようなことをする」という、一見荒唐無稽な漫画の設定が、検察官の仕事に結びつく、というのも、ちょっと変わった話だなと思い、書いてみました。