1 コメント欄にご質問をいただきました。
警察関係の方から、どのような専門分野が検察官任官後に有用か、という趣旨のご質問です。
警察以外の官庁の方のために、簡単に説明すると、警察内部では、結構分業が進んでいます。警察署の中には、刑事課、交通課、生活安全課、警備課、警務課、留置管理課、地域課などの課があります。そして、警察官としてキャリアを重ねる中で、「自分はここがメイン」という分野ができてきます。これを「◯◯畑」と言ったりします。「刑事畑」「交通畑」など。そして、刑事課は「強行犯」「知能犯」「盗犯」など、生活安全課も「薬物銃器」「組織犯罪」など、さらに内部で細かく分野が分かれています。これは、それぞれの捜査に独特な部分があり、担当者をある程度専門化した方が効率が良い、という部分があるのだと思います。
2 質問をされた方は、おそらく「自分の専門分野は検察官として有用なのだろうか?」などと気になったのだと思います。結論的には、もし専門分野をお持ちなら、それがどの分野であっても「専門分野がある」ということ自体が、強みであり、有用だと思います。
というのは、副検事任官者の多くを占める検察事務官出身者は、捜査に関しては、専門分野を持っていません。彼らの強みは「検察庁の内部の事務、検務に詳しい」という部分です。ただ、検察庁に入ってしまえば、それに詳しい人は沢山います。一方、「事件現場で鑑識活動に従事していた」「事故現場で実況見分をやっていた」「横領事件で帳簿捜査をやっていた」などの経験を持つ検察官は、それだけでレアです。いわゆる「尖った石」という存在です。警察官に限らず、海上保安庁の方は海事事件、出入国管理庁の方は出入国関係事件について、高いレベルの知見をお持ちです。そもそも、副検事試験の受験資格は、刑事事件に接点のある役所の方しか得られません。ですから、他官庁の方は、それぞれ刑事事件に接点がある専門分野をお持ちです。それは、必ず副検事としての業務に有用ですし、是非大事にしてほしいと思います。
3、最後に、質問者の方のために、交通事件の検察庁での位置付けについて。
部制庁の検察庁の多くには、交通部が設置されています。特捜部や刑事部のような大事件を扱う機会は、そう多くはありません。しかし、交通部には重大な任務があります。それは「膨大な数の事件に、全て的確に対処する」ということです。実は、検察庁が扱う刑事事件の数のうち、かなりの部分を交通事件が占めます。ですから、交通事件への対処が滞ると、未済事件の数が激増します。これは、「庁として業務が適切に回っていない」ことを示すとされています。なので、庁として、交通事件に対応するパワーがどれだけあるか、というのは、重要な問題です。また、副検事には、自分で交通事件に対処するだけではなく、検取事務官が担当する赤切符事件(交通違反のうち、反則金では済まなくて刑事事件となったもの)について、検取事務官を適切に指揮、指導することも求められます。交通事件に強い副検事は、必要不可欠です。
なお、以前もどこかで言及したように思いますが、警察官出身の副検事は、今はそれほど数が多くないようです。というのは、受験資格が「警部以上」と極めて厳しいからです。警部以上の警察官は、全警察官中の約8〜10%と言われています。感覚的には、警部補になれば副検事試験の受験資格としては十分なように思います。ただ、もしかしたらですが、警察が優秀な人材の流出を嫌がり、敢えて警察官の受験資格について高いハードルを設けているのかな、などと感じています。