1 ということで、恒例の答案構成です。相変わらずアクセスの伸びないテーマでどれほど実際に見てくれる人がいるのかは分かりませんが。しかも、モチベーションが上がらず、筆記の発表後の投稿です(スミマセン!)。
ただ、巷に流布している参考答案との違いは、「本当に勉強なしで頭の中から捻り出したことだけでどこまで書けるのか」という点にチャレンジしているところです。「憲法その10」で書いた判例重視の憲法出題傾向に照らすと、勉強なしで挑むこと自体が無謀かつ無意味な気もしますが、構いません!
それでは、令和6年憲法です。
【憲法】
問1 憲法31条が定める「法律の定める手続」の意義・内容について、同条は「法律」で「定める」ことだけを求めているのか、また、法律で定めることを求めているのは「手続」だけなのか、などといった観点を踏まえ論じなさい。
問2 被告人Aの刑事事件において、第三者Bに対する告知・聴聞の機会を与えないまま、Bの所有物を没収することについて、憲法上の問題点を論じなさい。
それでは、いつものように、「知らない問題を解くように」「山の麓から登るイメージで」「問題提起に重点を置いて」行きましょう!
2 まず、出題意図や答案全体のイメージです。
憲法31条をよく読みましょう。一般に罪刑法定主義を憲法上定めたとされている条文ですね。ただ、条文を極めて限定的に読むと、「法律で定めさえすれば、誰に対してでも生命自由を奪ったり刑罰を課して良い」と読めます。その上で、問1は①「『法律』で『定める』ことだけ」、②「『手続』だけ」、と2点の観点を示しています。このうち、②は多分「手続の法定だけでなく、内容の適正も求められる。」と書いて欲しいんでしょうね。一方、①についても、②と同じように内容の適正を求めるものと読むこともできそうです。ただ、「法律」「定める」に鉤括弧をつけているところからは、「法律以外」「定める以外」が罪刑法定主義において許容されるのか、という観点を検討して欲しいんだろうな、と推測します(なお、このブログの答案構成が、「設問の題意」を外しがちなのは、ご承知のとおりです。要注意です。)。そして、問2で、いわゆる第三者所有物没収手続(以下「三没」)を取り上げている点も踏まえると、①は、三没の法律が、公告の手続を政令に委任していることに関して「具体的な手続きの内容を、法定するのではなく、政令以下の行政機関の定めるルールに委任することが許されるか」、という点を論じて欲しいのかな、と思いました。①だけなら、「法律ではなく条例において刑罰を定められるか」という点も問題点として取り上げることができます。ただ、問2とのつながりを考えると、①に関しては、条例ではなく政令等への委任の方に絞った方が良さそうに見えました。というのは、地方自治体が条例において刑罰を定めることは、憲法第8章地方自治と、それを受けた地方自治法の解釈であって、憲法31条の解釈とは言い難い部分があるように思われたからです。この部分は、読みを外したら大減点かもしれません。なお、問2は、「告知、聴聞の機会を与えないまま没収することの問題点」が主眼なので、「財産権侵害」がメインの問題点でしょう。三没の公告手続の政令への委任は、あくまで枝葉の問題に留まりそうです。
なお、問2で出てくる三没は、検察事務官をしている人なら、立会事務官をしている時に、必ず何度もお目にかかっていると思います。検務の証拠品、執行あたりでも、良く馴染みのある手続と思います。他官庁の方のために軽く説明すると、例えば、違法薬物の所持事件では、通常はその違法薬物は「法律上、必ず没収する」と決められています。しかし、被告人が「違法薬物の所持は認めるが、自分のものではない。〇〇さんから頼まれて、預かって隠していた。」と述べることがあります。この違法薬物を、何もしないで没収すると、それは〇〇さんの所有権という財産権を侵害します。違法薬物は、通常は高価なものですから。常識的には「違法なものなんだから、所有者も所持しちゃいけないんだし、没収してもいいんじゃない?」と思われます。ただ、昔の裁判所が、ここに疑問を示したことをきっかけとして、三没の制度が導入されました。具体的には、判決前に「コレコレの違法薬物の所有者は、いついつまでに裁判に参加しなさい」みたいな掲示をします。普通は、〇〇さんは逃げ回っていますし、のこのこ出てきたら違法薬物所持の共犯等で捕まってしまうので、出てきません。ただ、それでも財産権保護のために、こういう手続をとっているのです。
ここ数年の副検事試験の出題内容を見ていると、この三没のように、検察事務官としての実務経験がないと、出題意図を理解することのハードルが高い問題が、全科目を通して年に1、2問ずつ出ているように感じます。他官庁の方は、こういう出題への対応は、大変だろうな、と思います。
3 全体のイメージが長くなりましたが、答案構成行きましょう。
まずは問1について。
「憲法31条は、法律の定める手続によらなければ、何人も生命、自由を奪われたり、刑罰を課せられないことを定めている。これにより、処罰規定の法定(罪刑法定主義)、刑事裁判手続、刑罰の執行手続等が法律により定められている。それでは、憲法は、『法律』により『定める』ことだけを求めているのか、条文の文言上は、それ以外の方法が許容されるのか否か、曖昧なことから問題となる。」
問題提起はこんなもんでしょうか。もっとグリグリ書いてもいいのですが、問が多いので、書く分量を絞る必要がありそうですからね。
「確かに、条文は『法律』で『定める』ことを要求している。しかし、刑罰に関する手続を全て法律によって定めることとすると、そのような手続を詳細に国会において検討しなければならないこととなる。刑事手続の専門家ではない国会議員にこのような検討を全面的に要求することは、困難で非効率的でもある。従って、刑事手続について、一定の範囲で行政機関の定める政令等に詳細な内容を委任することも憲法上許されるものと解する。委任の際には、対象となる事項を法律に明記し、委任事項の大枠については予め法律によって定めることによって、行政機関の裁量の幅を限定できる。また、これによって、『法律』によって『定める』とした憲法の趣旨を実現することもできる。」
と、まあこのくらいでしょうかね。ちょっとあっさりしている感じもしますが。正直、頑張って書こうとすると、とてもつかれる、というのもあります。
次に「手続」関係です。
「また、憲法31条は、『手続』の法定を求めている。それでは、手続さえ法定すれば憲法の要請を満たすのか、条文上、『手続の内容の適正』まで要求されているのか、文言上明らかでないことから問題となる。」
と、問題提起します。
「憲法が刑事手続の法定を定めたのは、国家権力の暴走によって、恣意的に国民を処罰することを予防するためである。そうであれば、内容が不適正な刑事手続が法定されると、やはり国民の恣意的な処罰を予防することができない。従って、憲法31条は、『手続』の法定のみにとどまらず、『内容が適正な手続』の法定を当然要求しているものと解される。そして、その『内容の適正』は、定められる刑事手続の内容が、国民の平等(憲法14条)など憲法の諸原則や人権保障規定に照らして整合的であるか、によって判断されるべきと考える。」
で、どうですかねえ。「内容の適正も求められる」で終わることもできるのですが。ちょっと中途半端な感じがして、つい付け加えてしまいました。適当にでっちあげた論述なので、減点対象になる危険もありますが。ただ、当たり前のことを書いてるだけなので、マイナスにはならないかな、と思い、書いてしまいました。
4 では、問2です。
「問2では、Aの刑事裁判において、Bの所有物が没収されようとしている。この場合、第三者Bに告知・聴聞の機会を与えないことで、憲法上いかなる問題が生じるか。没収は物の所有権を国家に帰属させる刑罰である。その効果は、第三者Bの所有物に対する所有権という財産権を強制的に奪うものである。そこで、告知・聴聞の機会をBに与えないままその所有物を没収することが、憲法29条で保障されたBの財産権を侵害し、違憲ではないかが問題となる。」
で問題提起はどうでしょうか。そして規範定立です。
「確かに憲法29条は1項で財産権を保障しているが、同条2項において、財産権の内容が公共の福祉との整合性を当然に求められるものであるとも定めている。その意味で、財産権は公共の福祉(憲法13条等)による一定の制約を当然に受けるもので、絶対不可侵の権利ではない。また、経済的自由については、経済に関する様々な事情を考慮した上でその制約等がなされることから、その適否は司法権によるよりも、より専門性の高い行政機関において判断がなされるのが合理的である。また、仮に行政機関の判断が誤っていたとしても、経済的損失の事後的な回復も容易である。従って、経済的自由の意見審査においては、表現の自由等事後的回復の困難な精神的自由に比して、より緩やかな基準により判断されるべきと考える(二重の基準)。具体的には、経済的自由の意見審査においては、その目的、手段に合理性が認められれば、合憲と判断されるべきと考える。」
うーん。二重の基準の規範定立ってこんな感じでしたかね。でっちあげなので、皆さんはちゃんと勉強して下さいね。そして当てはめです。
「問2では、Aの刑事裁判において、Bの所有物に没収判決がなされようとしている。例えば、Bの所有物である違法薬物をAが預かり所持していた場合を考えると、Bの所有物を没収する必要性は極めて高いことが明らかである。その意味で、第三者Bの所有物をAの裁判で没収することの目的には、合理性が認められる場合がある。しかし、あらゆるものについて、Bの主張を一切聞かずに没収可能とすることが許されるとも思われない。また、第三者Bが判明している場合には、裁判所において第三者Bに告知・聴聞の機会を与えることは比較的容易である。第三者Bの所在、連絡先が不明の場合には、公告等の手段により告知・聴聞を申し出る機会を容易に与えられる。従って、緩やかな基準で判断したとしても、第三者Bに告知・聴聞の機会を与えないまま、Aの刑事裁判でBの所有物を没収することは、その手続に合理性がなく、違憲であると考える。一方、第三者Bに告知・聴聞の機会が与えられている場合には、合憲であると考える。」
くらいですかね。最後の「告知・聴聞の機会を与えている場合」というのは、実は設問では問われていません。ただ、まあ、このくらいなら書いてもいいかな、と思いました。
5 問2は、掘り下げると、第三者の所有物を没収できる場合はどのような場合か、という刑法上の問題が出てきます。刑法19条2項は、任意的没収について微妙な表現を使い、没収の対象を① 犯人(共犯者を含む)の所有物、② 無主物、としています(②はさらに微妙な話もありますが。)。なので、任意的没収の場合は、第三者Bの所有物は、没収できないのが原則です。ただ、刑罰法規の中には「必要的没収」つまり必ず没収しなさい、という規定が設けられているものが結構あります。典型例が覚醒剤等の違法薬物です。この場合には、第三者Bの所有物であっても、第三者所有物没収手続によって没収をすることができるのです。一般規定である刑法19条2項の例外として、特別規定である必要的没収の規定が定められている、と考えるのでしょう。ここで出てくる問題が、「第三者Bの所有物について、第三者所有物没収手続を取ることで、(必要的没収ではなく)任意的没収ができるか。」という問題です。勉強不足なもので、判例上の解決を見ているか知らないのですが、実務的には「三没の手続をとっても、任意的没収はできない。」と扱われているように思います。問2は、任意的没収と必要的没収の場合分けをしていないことから、この点を書くかどうかが頭をかすめました。ただ、刑法上の問題点であり、憲法の答案で刑法の話を書くのも変なので、ざっくりと割愛しました。ただ、こういう風に書き手を悩ませてしまう問題というのは、あんまり作り方がよくないんじゃないかなあ、と感じました。せめて「コレコレの点は論じなくて良い」と添え書きするとか。まあ、その添え書きの書き方も難しそうですけどね。
6 この問題は、条例について書くか、必要的没収と任意的没収について書くか、など、書き手に悩ませる要素が多いと感じました。また、研修誌で出題側が「題意に沿った答案は多くはなかった。」とか書きそうな予感がします。
追記:二重の基準のところは、「より専門性の高い行政機関」の判断が良いとか書いちゃいましたが、立法は国会がやるのが三権分立の大原則ですから、この論述はダメダメですね。つい、法案の大半を省庁が作っていることから、筆が滑ってしまいました。自戒の為に、このまま残しておきましょう。すみません。